最悪の場合、角膜に穴があき失明する…眼科医が力説する「絶対にやってはいけないコンタクトの使い方」

AI要約

コンタクトレンズの長時間装着は感染症の原因になる危険性が高い。

ソフトレンズよりもハードレンズの方が目に優しい。

水道水でコンタクトを洗ったり、汚い手で取り扱うことは細菌の増殖を招き、失明する可能性もある。

コンタクトレンズを使う上で、気をつけることは何か。眼科医の林田康隆さんは「長時間の装着で、目の中は雑菌が増殖しやすい環境になってしまう。身近な医療機器だが、使い方次第では失明する可能性があることを知っておくべきだ」という――。(聞き手、構成=ライター市岡ひかり)

■ソフトレンズとハードレンズ、瞳に優しいのはどっち

 ――コンタクトレンズを使用する際に注意することは何でしょうか。

 コンタクトを長時間装着することによるトラブル例が非常に多いです。最近もテレビで若い女性タレントが「人前でカラコンを外せない」と話していました。カラコンをまるで素顔の一部のように思ってしまっている若い人は少なくありません。

 コンタクトレンズの着けっぱなしは感染症の原因になり、非常に危険です。

 特にソフトレンズの使用者が不調を訴えるケースが多いです。ハードレンズの方が目を傷つけるイメージがあるかもしれませんが、違います。

 ハードはレンズが小さく、まばたきするたびに動きます。すると、目とコンタクトの間の涙が交換されて、酸素や栄養が行き届くので目にやさしい。

 一方、ソフトレンズは、黒目の表面を覆うようにしてつけるので、一度装着するとさほど動かず、物理的な涙の交換が悪いので、酸素不足や栄養不足に陥ります。ソフトレンズはその特殊な材質により、涙を吸ってレンズ越しに涙が浸透するように設計されていますが、ハードと比較するとその差は大きい。

 ハードの場合、目が傷ついていると痛くて装着できないので、異常がわかりやすい。一方、ソフトは目に多少の傷があっても装着できるので、異常があっても気づきにくく、眼科に行かない人が多い。

 多少充血していても「つけられるからいいか」としてしまうので、症状が出てきたことには病態がかなり進行していた、というケースもあります。

■「このままだと失明するよ」

 ――つい長時間装着してしまうので、耳が痛いです……。

 コンタクトの度数が低いと、気づかずに重ねてつけてしまうひともいます。ウソみたいな話ですが、目の痛みを訴えて受診した患者さんがいました。

 なんでも、ソフトコンタクトをしたまま寝てしまい、翌朝そのことを忘れて新しいものを装着したと言うのですが、その患者さんの片目から3枚ずつ、計6枚のコンタクトがでてきました。

 これも極端な例ですが、以前、ある十代の男性の患者さんが「目が充血して目やにが出る」と受診に来ました。ワンデーのコンタクトを使っているとのことで、「いつからつけているのか」と聞いたら「3カ月間つけっぱなし」だと言うのです。

 幸い感染症は起こしていませんでしたが、今まで見たことがないくらい角膜(黒目)に“ぶりぶり”と血管ができていて、その時はさすがに「脅すわけじゃないけど、このままだと失明するよ」と注意しました。

 ――角膜に血管ができる、というのはどういうことなのでしょうか。

 人間の身体には、全身にめぐらされた血液によって栄養や酸素が送られています。

 角膜には血管がないので、栄養素と酸素は涙を通して取り込んでいます。

 もし身体の他の部位で、血液から酸素や栄養を受け取れなくなったらどうなるかというと、身体は「側副血行路」といって、新たに別の血流路をつくります。目も同じで涙から酸素を供給できなくなる状態が長く続くと、血管を作ります。

 目の表面である角膜は透明であり、もともと血管がない組織ですので、血管を作ることは苦手です。未熟で異常な血管しか作ることができず、酸素不足は解消されません。

 これを「角膜新生血管」と言いますが、もとの酸素不足が解消されないと、それが改善されるまでこの新生血管を作り続けることになります。

 結果的に角膜が濁ってしまったり、ストレスがかかりすぎてしまって角膜の病気を発症してしまい、失明に至るような怖い病態を起こしてしまいます。

 近年は素材の改良でかなり良くなっていますが、ソフトコンタクトレンズでは涙の交換が非常に悪いため、つけっぱなしにするというのは角膜とコンタクトレンズの間の古い涙がずっと交換されずに目の表面に接していることになりますので、酸素が極端に足りなくなるわけです。

 前の日のお風呂を流さずに、その都度お湯を継ぎ足して入っているようなイメージです。イメージ的によくないことがわかりますよね。

■水道水でコンタクトを洗ってはいけない

 前述のようにソフトレンズは涙を吸着することが重要です。ただ、この性質は涙だけでなく細菌も吸着してしまいます。ですから、水道水で洗う、点眼薬を使う、汚い手で取り扱うなどが禁止されています。飲める水道水でも実際は細菌が存在しています。

 ソフトレンズに細菌が付着すると、そこで増殖を始める。そんな時に、角膜に傷が入ってしまうと、汚染されたソフトレンズから細菌や微生物が角膜に入り込む。

 とくにアメーバ(アカントアメーバ)が引き起こす「アメーバ角膜炎」は注意が必要です。目に強烈な痛みや赤みが出たり、涙が過剰に出るなどの症状が挙げられます。特効薬が存在しないため、治療をしても視力が完全に回復しない場合もあり、治療は困難です。悪化すると角膜に穴が開いたり、角膜混濁して視力を失うこともあります。

 30年前なら教科書でしか見ない珍しい病気でした。しかし、今や若者の間では珍しくない。治療が難しく、失明にもつながる恐ろしい病気です。