「100歳でマラソン」百寿者研究でわかったヨボヨボしない人ほど血中濃度が低いホルモンと長生きしやすい性格

AI要約

日本人女性の平均寿命が90歳に到達する可能性が高まっている。

百寿者の人口は増加しているが、110歳以上のスーパーセンチナリアンの数はほとんど増えていない。

スーパーセンチナリアンになるためには、100歳時点での自立した生活が重要である。

■日本人女性の平均寿命はいずれ90歳に到達する

 慶應義塾大学医学部で百寿者研究が開始されたのが1992年。当時、元気な100歳の代表といえば「きんさん・ぎんさん」が有名でしたが、今、ニュースで目にする100歳の方々はもっとパワフルです。マラソン大会や水泳大会に出場していたり、まだ現役で働いていたりと素晴らしい活躍をされている人が増えています。高齢者の年の取り方は変化しているのです。

 昔にさかのぼると、80年代には、「人間の寿命は85歳を超えることはない」などと言われていました。しかし、2000年代に日本人女性の平均寿命は85歳を超えました。ここ数年は新型コロナウイルス感染症の影響で以前より短くなったものの、それでも87歳(23年時点)で世界一を誇ります。このままの傾向が続けば、いずれ平均寿命は90歳に到達するでしょう。

 日本では、百寿者の人口は53年連続で増え続けています。しかし、その一方で110歳を超える人――スーパーセンチナリアンの数はほとんど増えていません。

 20年の国勢調査のデータを見ると、100歳以上は約8万人、105歳以上はその8.2%の6515人、さらに110歳以上となると141人しかいません。前回、15年の調査ではスーパーセンチナリアンが146人だったので、その数は減っていることになります。100歳以上の人口は約20%も増えているにもかかわらず、110歳以上の人口が増えていないことを考えると、いかにスーパーセンチナリアンになるのが難しいかがわかります。

 では、どんな人がスーパーセンチナリアンになれるのか。これまでの調査でわかったのは、スーパーセンチナリアンは100歳時点で自立した生活を送っている割合が高いことでした。00~02年に実施した「東京百寿者研究」で100歳以上の304人を調査したところ、ADL(日常生活機能)のスコアで「自立している」「ほぼ自立している」と判定された人は約20%でした。その20%の人々は、さらに105歳まで長生きする確率が高いことが明らかになったのです。

■年を取っても衰えない理由

 元気に年を取っていくための秘訣(ひけつ)は、スーパーセンチナリアンから学ぶことができます。私たちの百寿者研究によって、彼らに共通する医学的特徴が明らかになってきました。

 一つは、心臓や血管系の病気になりにくいこと。特に、心筋梗塞や狭心症などのリスクを高める糖尿病の有病率が低いことがわかっています。スーパーセンチナリアンを含む百寿者の血液を調べたところ、NT-proBNP(神経内分泌因子)の血中濃度が低いほど長生きする傾向がありました。

 NT-proBNPとは心臓から分泌されるホルモンの一種で、心臓の機能が低下するほど数値が高くなります。スーパーセンチナリアンは100歳時点でのNT-proBNPの数値が、他の百寿者よりも低い傾向にありました。つまり、100歳を超えて長生きする人たちは,心臓や血管の老化が遅いということです。