『多聞くん』の後輩作品は、バディラブコメ。性格性悪の天才俳優に振り回される奮闘劇『ウチの万李がお世話になります』【書評】

AI要約

『ウチの万李がお世話になります』は、人気俳優と新人マネージャーの“バディ”ラブコメで、芸能界を舞台にした奮闘劇が描かれる。

主人公のマネージャーである七星は万李の傲慢な態度に戸惑いながらも、彼の仕事への姿勢を通じて成長していく姿が描かれる。

万李と七星の関係が徐々に変化し、バディとしてお互いを高め合いながら成長していく姿が描かれる。

『多聞くん』の後輩作品は、バディラブコメ。性格性悪の天才俳優に振り回される奮闘劇『ウチの万李がお世話になります』【書評】

 芸能界を舞台にした人気俳優と新人マネージャーの“バディ”ラブコメ『ウチの万李がお世話になります』(海道ちとせ/白泉社)の第1巻が2024年7月5日に発売された。

『ウチの万李がお世話になります』は、人気急上昇中の俳優・成田万李(なりたばんり)と彼に新しくついたマネージャー・明石七星(あかしななせ)を描いた作品である。華やかな芸能界を舞台に、仕事熱心だが傲慢な万李と、そんな彼に振り回される七星の奮闘劇が繰り広げられる。月刊誌「La La」で連載中の本作は、読み切りを経て連載化が決定した注目の新作である。

 大学生の七星は芸能事務所の社長をしている姉から、夏休みの期間だけ万李のマネージャーになることを切望される。万李は役者としての実力は超一流だが、私生活では傍若無人で横暴な態度を取りがちであった。そのため担当マネージャーは次々と辞めていき、七星はそんな彼の臨時マネージャーを任されることになったのである。七星は当初、万李の傲慢な態度に戸惑うが、彼の仕事に対する真摯な姿勢を目の当たりにするうちに、次第に仕事に打ち込んでいく。そして持ち前の根性と明るさで、数々のトラブルを乗り越え、万李を支えていくのであった。

 なんと言っても本作は、読者を惹きつける魅力的なキャラクター設定が見どころだ。特に、主人公・明石七星のキャラクター造形は秀逸である。彼女は特別な能力や才能を持っているわけではない。しかし、持ち前の明るさと素直さ、そしてガッツでどんな困難にも立ち向かっていく。その姿を見ると自然と私たちも笑顔を浮かべそうになる。また、物語が進むにつれて、彼女自身の成長も見られるのも魅力の一つである。最初はただ万李に振り回されていた彼女が、一人前のマネージャーとして成長していく姿はカッコよさも漂っている。

 また、万李の変化も見逃せない。彼は当初、傲慢で自己中心的な性格であったが、七星との関わりを通じて少しずつ丸くなっていく。それは彼が自身の問題と向き合い成長している部分でもあるが、一番は七星を徐々に信頼し、心を開いていくからだろう。万李と七星、バディとしてお互いを高め合い、芸能界の荒波を乗り越えていく二人が今後も楽しみである。

 もちろん「ラブコメ」のラブの部分も忘れてはならない。仕事を忘れ、思わずときめいてしまう七星の気持ちもわかるほどイケメンな万李。そんな彼がたまに見せる「デレ」は、読者の心を鷲掴みにするだろう。顔を合わせればケンカばかりの二人はどんなラブに発展していくのか、第2巻以降も注目していきたい。

 本作は芸能界という華やかな世界を舞台に、仕事に情熱を燃やす人々の姿を描いた、心温まる作品と言える。読者は七星と万李の成長を通じて、自分自身も成長する力をもらえるはずである。彼らの絆や努力が、読者にとっての励みとなり、日常の中にある「あと少しがんばる」気持ちを後押ししてくれることだろう。

文=ネゴト / ニャム