積極策に応えた価値ある先制「凡打」 岡山学芸館・田井和寿選手

AI要約

岡山学芸館の田井選手が初打点を挙げ、チームに先制点をもたらす。

田井選手は自身の世界に入り込む独特な集中力を持ち、練習に励んでいる。

チームは横手投げのエースに対抗する戦略を取り、田井選手の打撃もその一環だった。

積極策に応えた価値ある先制「凡打」 岡山学芸館・田井和寿選手

(15日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦、掛川西0―2岡山学芸館)

 0―0の二回1死一、三塁。岡山学芸館の打者田井和寿(3年)が3球目の変化球を見逃し、1ボール2ストライクと追い込まれたところで、佐藤貴博監督はバスターエンドランのサインを送った。

 「相手の二遊間が併殺狙いで深め。ゆるい変化球が来るカウントだから、転がせば打球は遅くなり、併殺は防げて三塁走者もかえれる」計算だった。

 ただ、左打席の田井は「2球連続で変化球は来ないかも」と速球待ち。意に反して、監督の読み通り外へカーブが来た。「なんとか食らいついて絶対転がそう」とバットに当て、遊撃手の左へゴロを打つ。相手は二塁に送球できず、三塁走者の小田裕貴(3年)が先制の本塁を踏んだ。

 この夏、岡山大会初戦から数えて8試合目にして、これが初打点。全試合に出場しながら、レギュラー野手で唯一打点がなかった。「チャンスも何度か潰して足を引っ張ってたんで、すごく気になってたんです」。顔がほころんだ。

 佐藤監督は「『田井ワールド』というのがあるんです」と語る。集中し始めると自分の世界に入っていってしまう。田井は「良い意味でも悪い意味でも、周りが見えなくなっちゃうんです」と照れる。

 毎日、宿舎を出発する前、独りで「ワールド」を作っている。少し早めに部屋を出て、人目につきにくいところでじっくりスイングをチェックしているという。この日の朝は「前足は開かないよう、左の肩は残して」と前日指摘されたことを復習したそうだ。先制の場面で、一塁走者のスタートに反応した遊撃手の逆を突く打球が打てた。

 学芸館打線は、この夏チーム最少の4安打に終わった聖カタリナ(愛媛)戦後、掛川西の横手投げのエースに対応するため「手元まで呼び込んで逆へ打つ」を徹底してきた。田井の一打も同じライン。甲子園初安打にはならなかったが、価値ある凡打だった。(大野宏)