「二足歩行の開発に失敗したifガンダム」「外装を外したメンテナンス中のジオング」独自の着眼点でガンプラ創作を楽しむモデラーたち

AI要約

ガンプラの魅力を発信するガンプラ創作モデラーたちのインタビュー。

一人は連邦軍の失敗した世界線をイメージしたガンダム&ガンキャノン、もう一人は内部メカのディテールを重視したガンプラを製作。

ユニークなアイデアと緻密な作業により、それぞれの作品にはこだわりと工夫が詰まっている。

「二足歩行の開発に失敗したifガンダム」「外装を外したメンテナンス中のジオング」独自の着眼点でガンプラ創作を楽しむモデラーたち

誕生から40年以上が経った今なお、幅広い世代を魅了し続ける「ガンプラ」。2023年3月末時点のガンプラの累計出荷数は7億6000万個を超え、世界的なロングセラー商品となっているが、そんな同商品の魅力を発信し続けているのが、自由な発想で“ガンプラ創作”を楽しむモデラーたちだ。

本稿では、「連邦軍がMSの開発に完全に失敗した世界線のガンダム&ガンキャノン」など、独創的なアイデアの作品を生み出すユーフォリア(@EUFORIA07)さんと、内部メカのディテールにこだわった写真を投稿するDON-GURI(@ten10kozo)さんにインタビューを実施。各メディアで取り上げられ、反響の大きかった作品について、製作にいたる経緯や作業過程で苦労したポイント、この作品を通じて学んだことなどを振り返ってもらった。

■ガンタンク風の四角い形になるよう、頭部は一からデザイン

「もしも連邦軍がモビルスーツの開発に失敗していたら?」という思いつきから、作品の製作をスタートしたユーフォリアさん。「連邦軍初のモビルスーツであるガンタンクは、二足歩行が実現できなかったため下半身が無限軌道になっていますが、次に開発されたガンキャノンではしっかり二足歩行が可能となり、人間のような手も実装されています。でもこれって、よくよく考えたらすごい技術なのでは?」とのことで、そうした技術の発展がなかった世界線(二足歩行が実現できなかった世界)をイメージし、これらのデザインを考え出したという。

とはいえ、単純にガンダムの上半身とガンタンクの下半身を組み合わせれば完成……というわけではなく、こちらの形状になった際に違和感のないフォルムになるよう、全体的に細かい調整も行ったと話す。

「特に見ていただきたいのは頭部の造形です。ガンタンクの身体にそのまま既存のガンダムやガンキャノンの頭を乗せるだけでは似合いませんし、作品としてもおもしろ味がありません。あくまでも“ガンタンクをベースに作られたガンダム、ガンキャノン”に見えるよう、ガンタンクのように四角く奥行きのある頭にする必要がありました。初めはガンタンクのキットの頭部をいじってガンダム、ガンキャノンに寄せようとしましたが、なかなかおもしろい形状にならなかったため、一から自作で用意しました」

頭部だけでも、こだわるべきポイントは山のようにあったそうだが、あらゆるパターンを考え、それらを形にしていく作業は楽しくもあったようで、「デザインをガンダム、ガンタンクのどちらに寄せるか?かっこよくするか、おもしろくするか、どちらに振るべきか?など、あれこれ考える時間は本当に楽しかったです。最終的に“どう頑張ってもかっこよくはならないだろう”という結論に達し、コミカルなデザインを目指すことになりました」とコメント。

そんな同作において、特に気に入っているポイントはアンテナの造形だという。「もともと額のV字アンテナを付ける予定でしたが、頭部の形状を変えたことによりバルカンの射線上とアンテナが被ってしまって……。これはまずいと思い、V字アンテナは諦めてガンタンクの耳アンテナを流用することにしたのですが、それによりコミカルな印象がより強まったように思うので、けっこう気に入っています」

■簡単かつ効果的なディテールアップの方法とは?

一方のDON-GURIさんは、もともとは普通にガンプラを製作する予定で、その過程をSNSにアップしたところ、「メンテナンス状態もかっこいいかも?」という声が多数寄せられたため、“格納庫で建造中”に見える仕様に切り替えたという。「内部メカのディテールをガンダムマーカーで塗っているところをアップしたのですが、これがなかなか好評で。左右で非対称になるように内部を見せたり、コードを追加したりと、いろいろ思いつくまま手を加えて、こちらの形に仕上げました」。

「内部メカをいかにかっこよく見せるか?」という点にこだわりつつも、そちらだけに注力しすぎないよう気をつけたそうで、制作過程で難しかった部分については、「外装をはがした状態でもすぐにジオングだと分かるように、全体のバランスを調整したことです。最終的に“半分は外装を残す”形にまとまりましたが、いいバランスに仕上がったんじゃないかと思います」と話す。

また、モノアイ部分の造形にもこだわりがあるそうで、「写真ではわかりにくいのですが、モノアイ部分にはカバーのビニールを貼っています。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の冒頭で、建造中のνガンダムの眼の部分にビニールのようなカバーがあったのが印象的だったので、今回チャレンジしてみました。ほとんど伝わらない部分ですが、気に入っています」とのこと。

最後に今回の製作を通して、モデリングにおける新しい発見や学びはあったか質問してみたところ、「内部メカをガンダムマーカーで塗り分けすることが、簡単かつ効果的なディテールアップの方法だと学べたことが大きいですね。これ以降の模型製作でも、よく同じ手法を使っています。スケルトンのキットもたくさん作っていますが、内部メカの塗り分けを活かしたモデリングは楽しいので、これからも続けていきたいです」といった意見を聞かせてもらえた。

取材・文=ソムタム田井

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