猛暑に食べたいひんやりテリーヌ ハモ、アワビ…「断面萌え」も食欲刺激

AI要約

テリーヌはフランス料理の代表的な冷前菜であり、料理人の技量が試される王道料理である。斬新なアイデアや感性を表現しやすく、美しい断面を楽しむ「映え」料理としても知られる。

東京・代官山の「レザンファンギャテ」ではさまざまな種類のテリーヌが提供されており、特に野菜のテリーヌや魚介を使ったテリーヌが人気を集めている。

夏に最適なさっぱり系の野菜のテリーヌや、魚介のテリーヌ、豪華なアワビを使用したテリーヌなど、多彩な味わいが楽しめる。

猛暑に食べたいひんやりテリーヌ ハモ、アワビ…「断面萌え」も食欲刺激

今年も猛暑がやってきた。こんなときは、ひんやり冷たい料理、さっぱり喉越しのよい料理、逆にスタミナがつく料理、落ちた食欲を刺激する料理が食べたくなるもの。すべてを満たしてくれるのが「テリーヌ」である。

テリーヌはフランス料理における冷前菜の代表格。複雑な手順を必要とし、フレンチの基礎的技術が集約した料理であり、その出来栄えで料理人の技量が分かる古典の王道といわれる。しかも斬新なアイデアや感性を表現しやすく、断面の美しさを目で愛(め)でる「映え」料理の先駆けでもある。

東京・代官山の「レザンファンギャテ」は2007年の創業以来、テリーヌをスペシャリテとし、常時8種類をそろえるレストラン。シェフの松澤直紀さんに、この夏おすすめのテリーヌをセレクトしてもらった。

さっぱり系では野菜のテリーヌ(冒頭の写真)は外せない。コンソメジュレで固めるタイプが一般的だが、材料は野菜と塩だけと超シンプル。20種類の旬の野菜をそれぞれ塩ゆでし、プレスしながら型に詰めて密着させていく。つなぎなしで圧縮するため、ジュレタイプのテリーヌの約2倍の量の野菜を必要とする。1辺およそ10センチのテリーヌ中には味、香り、食感が一体化した野菜の風味が凝縮して、ふわふわしたサラダでは決して味わえないおいしさだ。

これまで数えきれないほど多くのテリーヌを創案してきた松澤さんだが、野菜のテリーヌは今もワクワク、ドキドキしながら作る。そのときの気分や野菜の状態、形によって並べ方を変えるので毎回、違う表情に仕上がる。「考えながら詰めているので、途中で話しかけられるのが、いちばん困る」そうだ。切ったとき、イメージ通りの断面だったときの喜びは、どのテリーヌよりも大きいという。

魚介を使ったテリーヌで注目したいのは、メインとサブの食材の相性だ。この春は、昆布締めにしたマダイと焼きのりをマリアージュさせた。夏に旬なのは、ハモのテリーヌである。和食の職人に教えを乞い、骨切りを洋包丁で完璧にこなせるまで習練を積んだという、こだわりの逸品だ。

関西ではハモは梅肉で食べるのが定番。そのセオリーを応用し、梅肉の酸味、大葉の香りが爽やかなソースを添えて提供する。テリーヌ自体には梅肉を加えず、ナガイモ、インゲン、ミズナをハモの間に挟む。半生に火入れしたナガイモの独特な食感と粘りがつなぎの役割を果たし、ハモと緑の野菜がちょうどよく調和する。

見た目は地味だが、とびきりぜいたくなのが、クロアワビを丸ごと詰めたテリーヌ。アワビに似たコリコリとした食感のアワビタケを周りに配置して、美しいマーブル模様を描いた。

アワビはさっとゆで、そのゆで汁とコンソメでアワビタケをゆっくりと煮含める。アワビとアワビタケのうま味が濃縮した煮汁はジュレに仕立て、テリーヌのつなぎに。エストラゴンの甘い香りがアクセントになって、アワビのうま味の余韻が長く続く。