キャリア官僚がエリートだった時代は終わり…立命館大学が合格者数3位の大躍進

AI要約

キャリア官僚たちの苦悩と変化について述べられており、若手の退職や志望者の減少、立命館大学の取り組みなどが取り上げられている。

国家公務員総合職の難しさや試験に関する統計、女性の増加などが示されている。

キャリア官僚のイメージと現実のギャップ、キャリアへの魅力の変化について考察がなされている。

キャリア官僚がエリートだった時代は終わり…立命館大学が合格者数3位の大躍進

 キャリア官僚(国家公務員総合職)の職場である霞が関の官庁ビルは、この猛暑で灼熱地獄となっている。28℃設定の全館冷房であるため、南面の部屋など一部の職場は酷暑に悩まされており、夜になるとクーラーが切られてしまうこともあるという。城山三郎氏の名作『官僚たちの夏』では、戦後の日本経済成長に使命を懸けた昭和のキャリア官僚たちが活躍する熱気が描かれているが、令和の夏はキャリアにとって文字通り猛暑となったようだ。

 人事院の調べでは、2022年には、勤続年数10年に満たない若手キャリアの退職者が177人となり、この10年間で最も多くなった。退職の主な理由としては、「自己成長できる魅力的な仕事につきたい」「収入が少ない」や「長時間労働が常態化している」などが多かった。東大生の間でもスタートアップ企業の人気が高まり、自己成長志向は強まっている。半面、キャリアの職場のブラックなイメ-ジが広がっており、深夜まで国会対策用の資料作りに追われ、その割に賃金が安く、大学OB会での同期との賃金比べの話題を嫌がる若手キャリアも多い、と聞く。

■キャリア官僚志望者は10年で3/4に減少

 そのためかキャリア官僚を目指す学生も減っている。国家公務員総合職試験(院卒と大卒程度)の申込者数は2013年に24360人だったのが、2023年は18386人と3/4に減っているのだ。半面、キャリア官僚を選抜する国家公務員総合職の合格者のうち女性の割合は急増している。2013年は19.6%であったが、2023年には33.5%まで増加しているのだ。キャリアのジェンダーレスは進んでいるようだ。

 総合職試験には、大学4年が主に受験する春試験と大学2.3年生が受験可能な秋試験がある。この秋の試験区分は「教養区分」といわれており、2023年から大学2年生から受験できるようになったため、2023年は申込者が激増した。2022年の2952人から4014人と前年比で36%も増えたのだ。

 

 一方、2024年の大学4年生向けの春試験の結果は、今年5月28日に発表された。大学別の合格者は、①東京大学189人、②京都大学120人、③立命館大学84人、④東北大学73人、⑤早稲田大学72人、⑥千葉大学63人、⑦大阪大学58人、⑦北海道大学58人、⑨広島大学55人、⑩慶應義塾大学51人となっている。私立大トップになった立命館大学が注目された。

■立命館大学が2013年から試験対策講座を開講

 立命館大学では国家公務員総合職にチャレンジする学生を積極的にサポートしている。現役のキャリア官僚を招いて、1、2年生を対象に講演会やディスカッションなどを開く『立命館霞塾』を2013年から実施している。3年生からは法文系、技術系、心理系などに分けて試験対策講座を開講している。また奨学金制度がある、国家公務員総合職試験場が大阪にも設けられているなど、立命館大学のキャリア希望者にはさまざまな就活関係のコスパが良いこともプラス要素だろう。

 ただ総合職試験に合格しても採用決定でなく、官庁訪問をして、面接を受けた結果によって正式採用になる。面倒で長い就活活動を強いられるのだ。

 はたして職場のブラックなイメージが広がり、長時間労働で賃金も安く、魅力を失いつつあるキャリア(総合職)になるメリットは、何だろうか。野心家は、地方自治体首長への近道と考えているのであろう。しかし最近は、パワハラ問題で報道されている兵庫県の斎藤元彦知事ではないが、以前より社会の目は厳しくなっている。キャリア官僚がエリートだった時代は確実に去ったのだ。

(木村誠/教育ジャーナリスト)

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 大学教育の現場を取材する著者は気私大・学部に区分し、ここ7年の偏差値上昇を分析している。学部では心理系が右肩上がりだそう。●関連記事【もっと読む】2018年から25年を調査!7年間で偏差値上昇の大きかった私立大学・学部は?…で詳しく報じている。