「おねしょする5歳」に「あばれる小6」子どもたちのリアルな苦しみ描く、ふたりの新人作家が生み出す“新時代”の空気

AI要約

子どもたちの姿をリアルに描いた新人作家ふたりの作品について、それぞれのエッセイや小説の特徴が紹介されている。

潮井エムコさんのエッセイは家族の人間模様をユーモラスかつ感動的に描き、せやま南天さんの小説は子どもたちの生き様と家族の問題を丁寧に描写している。

ふたりの作品から子どもを尊重し枠にとらわれない個々の人格を描く姿勢が浮かび上がる。

「おねしょする5歳」に「あばれる小6」子どもたちのリアルな苦しみ描く、ふたりの新人作家が生み出す“新時代”の空気

>>対談中編「『誰にも奪えない』『自分にしか書けない』自分だけの言葉を大切にした新人作家ふたりの眼差し」よりつづく

 子どもはいきいきしていて明るいだけではない。ときにストレスで「気持ちとからだが別」になってしまうこともある。

 今年デビュー作を上梓したふたりの新人作家が、そんな子どもたちの姿をリアルに書き上げた。

 ひとりは潮井エムコさん。初めて書いた高校時代の思い出についてのエッセイをウェブ上のメディアプラットフォーム「note」にアップしたところ、SNSで拡散され、累計30万を超える「いいね」を獲得。今年1月に初のエッセイ集、『置かれた場所であばれたい』(以下、『置かあば』)を刊行した。

 本作は、生卵を育てさせる先生、元スパイの祖母、娘を山に放り投げる母など、人間模様を描く、おもしろくも時折胸をきゅっと締め付けられるようなエッセイ集。とくに折り合いの悪かった母とのエピソードが続く幼い頃の思い出は、ありありとした心情描写が光っている。

 そしてもうひとり。せやま南天さんは、仕事と育児を経験し、「家事」というものと向き合うなかで着想を得て、小説『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(以下、『クリキャベ』)を執筆。noteが主催する創作大賞2023で朝日新聞出版賞を受賞した。

 仕事で挫折を味わい、家事代行で働き始めた主人公・永井津麦と、津麦の勤務先の、5人の子どもを育てるシングルファーザー・織野朔也一家。津麦と朔也、そしてその家族、それぞれが抱える問題が浮き彫りになる――。登場人物の丁寧な描写も評価された作品である。

 潮井さんのエッセイでは、幼い頃の潮井さん自身や友人たち。せやまさんの小説では、母を失った織野家の5人の子どもたち。作中の子どもたちの姿からは、「良い子」の枠にはめられる息苦しさと、その枠を押し破ろうとするエネルギーが感じられる。「子どもを一個の人格として尊重すること」について、作者が語り合った。

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■ふたりのコンプレックス

せやま南天(以下、せやま):私は昔、システムエンジニアとして働いていた頃に、上司から「せやまさんはいつも最短ルートばかり通ってるね。もっと寄り道してもいいんだよ」と言われたことがあって。真面目すぎることがちょっとコンプレックスなんです。