大谷選手のホームランも…野球の観戦中にボールが観客に直撃してケガ 裁判でも争われた「誰の責任?」

AI要約

観戦中にボールが飛んできてケガをする事故が起きることがあり、その責任の問題についての裁判例がある。

裁判例では観客がプロ野球の観戦に伴う危険を受け入れた上で球場に来場しているとされ、安全性について判断された事例がある。

観客は注意喚起があり、フェンスの高さなど安全面が一定水準以上であれば、通常の安全性を提供されていると考えられる。

大谷選手のホームランも…野球の観戦中にボールが観客に直撃してケガ 裁判でも争われた「誰の責任?」

オリンピックに高校野球とスポーツ観戦が楽しいシーズンとなりましたが、野球場や競技場で観戦していた時に飛んできたボールが直撃してケガをすることもあるようです。

プロ野球のオールスター戦を観戦していたところ、ボールが飛んできて手にあたって、骨折してしまったという女性の投稿が最近、Xで注目を集めました。

女性はボールを自ら取りに行ったのではなく、観ていた時に突然、ボールがぶつかったと説明しています。女性は、左手に包帯を巻いた痛々しい写真とともに「皆さん野球観戦にはお気を付けください………」と投稿していました。

ドジャースの大谷翔平選手も7月、打ったホームランが観戦していた日本人の子どもの頭部に直撃したと報道されました。子どもは検査で異常がなく、無事に帰国できたとのことです。

こうした不運な事故はこれまでにもしばしば発生し、裁判にまでなったこともあります。もしも観戦中にボールが飛んできてケガをしてしまった場合、誰の責任が問われることになるのでしょうか。本間久雄弁護士に聞きました

――野球場ではよく「ファウルボールにご注意ください」といった場内アナウンスがありますが、本当に当たってしまった場合、観客の自己責任になるのでしょうか。

野球場では、ホームランボールやファウルボールが観客席に飛び込んでくることは、野球観戦に来た観客としてはある程度織り込み済みのことではないかと思われます。

どこまでが観客の自己責任となるかが問題となった裁判例として、札幌高裁平成28年5月20日判決があります。同判決は、札幌ドームで子どもを連れて観戦していた女性にファウルボールが直撃して右眼球破裂等の傷害を負ったという事案です。

女性は、試合を主催していた日本ハムファイターズ、札幌ドームを管理していた株式会社札幌ドーム、札幌ドームを所有していた札幌市に対して損害賠償請求を行いました。

同判決は、「観客は、相応の範囲で、プロ野球というプロスポーツの観戦に伴う危険を引き受けた上で、プロ野球の球場に来場しているものというべきである」とした上で、札幌ドームではファウルボールに対する注意喚起の放送、警笛がなされていたこと、フェンスは屋外体育施設の建設指針や他のプロ野球の球場のフェンスと比較して低くなかったことから、社会通念上、プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとは言えないとし、株式会社札幌ドーム及び札幌市の損害賠償責任を否定しました。