『定年後』の著者・楠木 新さんが教える、学びの場で人とつながる「新たな居場所」の見つけ方

AI要約

楠木新さんはシニア世代の生き方について持論を展開し、「定年後」だけでなく、「75歳からの生き方」も考える必要があると説く。

高齢者に新たな居場所を提供する団体を取材し、無料学習塾を運営する人々の活動や生徒の姿を紹介。

教育格差を埋めるために活動するボランティア講師や地域活動参加者たちの生きがいと成長を示唆。

『定年後』の著者・楠木 新さんが教える、学びの場で人とつながる「新たな居場所」の見つけ方

NHK『日曜討論』ほか数々のメディアに出演し、シニア世代の生き方について持論を展開するライフ&キャリア研究家の楠木新さん。人生100年時代を楽しみ尽くすためには、「定年後」だけでなく、「75歳からの生き方」も想定しておく必要があると説きます。楠木さんが10年、500人以上の高齢者に取材を重ねて見えてきた、豊かな晩年のあり方について紹介します。

新たな居場所を見つけようとする際、組織や団体と関係を持ちながら探すのが近道です。私が取材したなかに、厳しい経済環境にある家庭の子どもたちを受け入れる、無料学習塾を運営する人がいました。ひとり親家庭や非正規雇用の家庭では、衣食住はギリギリ何とかなっても、教育にまでお金をかける余裕や時間のないケースが少なくありません。それが「教育格差を広げている」と、60代の主婦が奮起したのです。

実際の授業風景を取材させてもらいました。小学生はグループ授業で、カードを使って遊び感覚も交えた内容でした。別の部屋では中学生が講師と1対1で数学や英語に取り組んでいました。小さいホワイトボードを使って何度も書いては消しながら進めていたペア、机の上が消しゴムのカスだらけのペアなど、夢中になって取り組んでいた姿が印象的でした。

講師として来ていた元会社員3人と元高校の英語教師にも話を聞きました。元会社員は、年齢的には68歳から70歳。製薬会社や電機メーカーを定年退職した男性です。

70代後半の元英語教師は、中学生に興味を持ってもらえる授業ができるように工夫を凝らすのが楽しいと語っていました。彼は、妻の介護をしながら月に2回、1時間半ほど中学生に教えています。生徒との年齢差は約60歳。趣味である囲碁の会所に通うのと、この教室に来るのが今の楽しみだそうです。

代表の女性は、交通費すら自腹になる「無償のボランティア講師」など、誰も来てくれないのではないかと初めは思っていました。ところが高校生から高齢者まで手を挙げる人が多数いて、「世の中捨てたもんじゃない」と思い直したそうです。

地域活動で、外国人労働者に日本語を教えている人たちもいます。また仲間と一緒に小学生向けの工作教室を開催している例もあります。自分の経験が誰かの役に立っていると実感できれば、人生がより豊かになるのは間違いありません。