「ただ書き続けることに挑戦していきたい」 芥川賞の朝比奈秋さん一問一答
芥川賞受賞の朝比奈秋さんの記者会見でのコメントを要約すると、制作への姿勢や今後の目標、作品への思いなどが明らかにされた。
朝比奈秋さんは医師の仕事を辞めて小説を書いた経緯や作品制作への姿勢、賞受賞後の気持ちを語った。
今後の目標は、名誉よりも小説を書き続けることに挑戦し、人生や創作により深く向き合っていく意向を示した。
「サンショウウオの四十九日」(新潮社)で第171回芥川賞に選ばれた朝比奈秋さん(43)は17日夜、シャツにジーンズのカジュアルな姿で記者会見に臨んだ。一問一答は以下の通り。
--現在の気持ちは
「大変光栄に思っております。今後出る選評をよく読んで、自分自身の小説に対する理解を深めていければと思っています」
――文学的野心に満ち、難しいことをやろうとしてあるレベルで達成されているとの選考委員の評価。どう受け止める
「野心というほどのものはないけど、一生懸命、(結合双生児のことを)探求的に書いたので、それが一定のレベルに達しているといわれたことは大変うれしいです」
--小説のために(医師の)常勤の仕事を辞めざるを得なかったと聞いたが、芥川賞を受賞して改めての気持ちは
「賞のためとか、何かの目的のために書いてきたわけではないので、書くことの大変さ、つらさは今後も変わらない。ただ、名誉ある賞をいただいたので、書きたくないけど書いてるとは言いづらくなる(笑)」
--作品でも書かれてきた人の命について、これからどう向き合っていくか
「生きている間にしかできないことがある。生きてる間は、昔は医者の仕事、今は作家ですけど、一生懸命生きることが命とは何かとかに一歩近づくことじゃないかと思う」
--今後の目標、書きたい小説は
「大きな賞をもらうよりもっと難しいのは、書き続けること。どんな小説でもいいので、それが評価されなくてもいいので、ただ書き続けることに挑戦していきたい」
--受賞作はかなり時間をかけたそうだが
「書き始めたのは5~6年前。1~2年で1回書きあがったが、完成とはいえないと思ったし、ここまで書けなかった。この間に僕自身も人間として経験をしたり、作家としていろいろな小説を書いたりしているうちに、生きるとはとか、体とは、精神とは、自我とは、意識とはというものに対して、多少は理解を進めることができて、ようやくこういう小説を書き上げることができたのでホッとした」
――最後に一言
「気がつけば小説を書き始めて、この業界に拾われて、今ではこういう賞をいただいて、読者や関係者の方々に見守っていただいている実感があります。今後も書き続けていくので温かく見守っていただければうれしいです」