「ここは唯一無二の場所だ」熊野古道はなぜ人を魅了するのか…現地を訪れてわかったこと

AI要約

熊野古道は歴史ある参詣道であり、熊野三山を巡るルートで人気が高い。

熊野本宮大社は熊野神社の総本社であり、重厚な社殿が国の重要文化財に指定されている。

川湯温泉では異なる源泉の温泉が楽しめ、自分だけの露天風呂を作ることもできる。

「ここは唯一無二の場所だ」熊野古道はなぜ人を魅了するのか…現地を訪れてわかったこと

熊野古道をご存じだろうか。かつて皇族貴族らが歩いた参詣道は近年、インバウンドに大人気の観光スポットになっており、海外からの評価を受け、国内での関心も高まっている。なぜ人は熊野古道に魅せられるのか。前編記事『インバウンドに大人気の「熊野古道」を歩くーー予約1年待ちも…京都では得られない感動とは』に引き続き、実際に熊野古道を歩き、その魅力を探っていく――。

熊野古道は紀伊半島の南にある熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社・那智山青岸渡寺)と、京都や吉野、伊勢などを結ぶ古い道のこと。6つのルートがあるが、昔から最も多くの人が歩き、今も人気なのが「中辺路」。紀伊半島の南西部海沿いに位置する田辺市街地から内陸の山間部にある熊野本宮大社を経て、熊野速玉大社、熊野那智大社・那智山青岸渡寺に至るルートだ。

中辺路を歩いて到着する最初の聖地が熊野本宮大社だ。熊野速玉大社、熊野那智大社とともに、全国に4000社近くあるといわれる熊野神社の総本社であり、檜皮葺の重厚な社殿は国の重要文化財にも指定されている。かつては熊野川に音無川などが合流する地点の中州にあったが、1889年(明治22年)の大洪水で社殿の多くが倒壊・流失してしまい、残った社殿を現在の社地に移築した歴史を持つ。

入り口や参道に立てられたのぼり旗から社務所で販売されているお守り、郵便ポストまで境内の至るところで三本足の「八咫烏」が目に入る。サッカーファンにもなじみ深い八咫烏は熊野三山のシンボルだ。

「神武東征」の際、八咫烏は吉野山中で停滞する神武天皇一行を大和まで道案内し、勝利に導いたことから、導きの神としても信仰されており、日本代表が大きな大会に臨む際には必ずサッカー協会の関係者が訪れて勝利を祈願するという。

一方、熊野本宮大社の境内から徒歩10分ほどの距離にある旧社地「大斎原」には高さ約34メートルの大鳥居が立ち、人気のパワースポットとなっている。古道歩きではアジア圏の人に出会うことは少なかったが、大斎原ではラフな服装をしたアジア圏の人が目立ち、若いカップルが大鳥居の前で様々なポーズを取りながら記念撮影をしている。欧米豪とアジア圏の旅行者の違いについて、語り部の松本茂子さんはこう説明する。

「日本の文化を体感したい――。欧米豪の方はこの部分に重点を置いていて、実際に歩くことを含めて様々なことに挑戦している印象があります。一方、アジア圏、とりわけ中国の方は写真として記録に残すことを求める傾向があると感じます。実際に熊野古道を歩く人はそれほど多くないですね」

大斎原の大鳥居同様、SNS映えするとして人気なのが川湯温泉だ。本宮には源泉の異なる3種の温泉があり、熊野本宮温泉郷を成している。そのひとつである川湯温泉は、川底を掘ると熱い湯が噴き出すという珍しい温泉で、熊野川の支流・大塔川沿いではスコップ片手に自分だけのオリジナル露天風呂を作って記念撮影するアジア圏からのインバウンドの姿が多く見られる。

旅の初日に宿泊したのは川湯温泉街にある「山水館 川湯みどりや」。こちらには目の前に大塔川を望む混浴の川原露天風呂があり、熊野の自然を眺めながら湯につかるインバウンドの姿があった。