中学時代の因縁が私を苦しめ続ける。逆襲系サレ妻マンガ『夫の浮気相手は中学の同級生でした』【書評】

　恋愛・不倫・ストーカー被害…といった、女性のあらゆる体験談をマンガ化してきた人気ブロガー・3cha先生。2022年にはライブドアブログ内で史上2人目となる月間4,000万PVという偉業を達成するなど、その作品は多くの読者から注目されています。

　そんな大活躍を続ける3cha先生が初の長編ストーリーに挑戦し、書籍化された『夫の浮気相手は中学の同級生でした』（3cha/KADOKAWA）をご存知でしょうか。

　本作は、過去に寄せられた体験談をもとにストーリーを再構成。サスペンスの香りが漂う、フィクションならではのおもしろさが凝縮された「体験談マンガとは一味違う3cha節」を楽しめる1冊です。

　妊活中の主人公・ちひろが自宅で遭遇したのは、下着姿の夫と女性。しかもその女性は「ハイエナ」と揶揄されていた中学時代の同級生でした。中学時代の因縁はその不倫相手に留まらず、まさかの人物までもが土俵に上がってくる展開に!? ハラハラが続くストーリーが畳みかけ、ラストまで目が離せません。

　夫のゲス不倫に巻き込まれてしまったちひろは、どんな現実を突きつけられてもしょげずに立ち向かっていきます。彼女の勇猛果敢な姿にスカッとする方は多いはずです。

　見どころはなんといっても、「ハイエナ」との不倫だけで終わらない夫の不埒な行いの数々でしょう。「そんなことまでしていたの!?」「このあとどうなるんだろう！」という読者の視線を釘付けにするストーリー展開は、さすがのひとこと。

　普段は、読者から寄せられた実話をより際立たせられるような演出を加えてコミカライズしているという3cha先生。本作も、過去の作品を通して鍛え上げられた演出力で読者の心を釘づけにしています。

　体験談の良さは、実際に体験した人の身に起きた生々しさやリアル感を楽しめるところです。しかしそれらは、必ずしも読み手の納得する結末を迎えるとは限りません。不倫を繰り返す旦那さんと再構築することも、証拠をつかめず泣き寝入りしてしまうことも、起こりえるのが現実です。

　その点『夫の浮気相手は中学の同級生でした』には、フィクションだからこそできた理想や憧れ、希望が詰め込まれています。

　3cha先生は本作を、「傷ついた誰かの背中をそっと押したい」という願いを込めて制作されたそう。だからでしょうか、こうあって欲しい！ と読者が願うような主人公像がちひろには反映されているように感じます。

　個人的な注目は、ちひろが夫と不倫相手を問い詰める尋問シーン。様々な証拠を集め、徹底的に逃げ道をつぶす冷静な手腕は、名探偵さながらです。不倫されるのは嫌ですが、人生1度ぐらいはこんなにカッコよく立ち回ってみたい、と思わせられる迫力があります。

　不倫をした夫にも、その不倫相手にも、徹底的にギャフンと言わせたい！ そんなスカッとする逆襲系のストーリーがお好みの方には、ぜひ読んでいただきたい作品です。いつもとは違う3cha節をぜひお楽しみください。

文＝ネゴト/ あまみん