膵臓がん治療には「太陽を拝むべき」…闘病中の森永卓郎さんに1日100通以上届く「怪しいメール」の正体

AI要約

森永卓郎さんが膵臓がんのステージIVであることを公表し、闘病生活を送っている中で受けたさまざまなアドバイスについて述べられている。

受けたアドバイスには宗教の力を借りるべきというものがあり、独自宗教や新興宗教への入信が勧められたことが挙げられている。

また、様々な人から送られてきたお守りについても触れられており、周囲の人々からのサポートに感謝の気持ちが示されている。

経済アナリストの森永卓郎さんは2023年12月に膵臓がんのステージIVであることを公表した。その後、どんな闘病生活を送っているのか。『がん闘病日記』(三五館シンシャ)より、新興宗教への入信を勧められた話をお届けする――。

■がん公表後にメールが倍増した

 私のメールアドレスには、ふだんから1日100通以上のメールが来る。がんの公表後、それが倍増した。

 もちろんお見舞いや励ましのメールも数多くあったのだが、それをはるかに上回るペースで、治療のアドバイスが寄せられたのだ。その勢いは、その後、5カ月以上経っても続いている。

 アドバイスの内容は千差万別だったが、類型化すると以下のように整理される。

■「宗教の力を借りるべき」というアドバイス

 まずは精神論だ。治療のためには、前向きの気持ちを捨ててはいけない。だから常に希望を持てるように、毎日「太陽を拝むべき」、「わっはっはと笑うべき」といったものだ。

 前向きの気持ちが大切だというのは全面的に賛成なのだが、私にはなぜ太陽を拝むと前向きになれるのかはよくわからない。

 宗教の力を借りるべきだというアドバイスもたくさん来た。

 「ご先祖さまに祈れば救われる」といった独自宗教や、知名度の低い新興宗教、そこそこの知名度のある新興宗教への入信が勧められた。

 勝手な想像だが、そのことで私ががんの克服に成功したら、それを教団の宣伝材料にしたいのだろう。

■「あの世での幸福を得るために祈りなさい」

 そして、仏教やキリスト教といった確立した宗教からのお誘いもあった。

 ちゃんとした宗教だから、アドバイスはしっかりしているのだが、私が違和感を禁じえなかったのは、「あの世での幸福を得るために祈りなさい」としていたところだ。

 私は、あの世の存在を信じていない。いまの人生が終わったら、元の木阿弥(もくあみ)、何一つ残らないと考えている。

 それではなぜ、宗教があの世の存在をアピールするのかというと、信者に現世での幸福をもたらそうと考えているからだ。

 ほとんどの信者はつらい人生を送っている。それを直接改善することは、どんな宗教でも容易ではない。

 そこで「いま祈っておけば、来世での幸福が訪れますよ」と言って希望を与える。その希望が信者の現世での生きがいとなって、現世もまた幸福になるのだ。

 ところが、私は来世の存在を信じていない。現世の暮らしも、やりたいことをやってきた。だから、現世での暮らしがつらいとか苦しいとか感じていないのだ。

 そうした人間に宗教は不要だ。

■送られてきた「お守り」

 ただ、ちょっとだけ嬉しかったことがある。それは多くの人がお守りを送ってきてくれたことだ。いま私の寝室には、送られてきたお守りがずらりと並んで吊り下げられている。

 最初にお守りを送ってきてくれたのは、上島竜兵さんの奥さまの広川ひかるさんだった。ラジオで一度共演させていただいた関係だ。お手紙には書いてなかったが、おそらくご主人を亡くされた経験を踏まえて、私に生き延びてほしいと思われたのだろう。

 お笑い芸人のみほとけさんは、わざわざ奈良の大安寺(だいあんじ)に出かけて、祈祷(きとう)を受けたお札を持ってきてくださった。

 みほとけさんは、お笑い芸人であると同時に仏教の専門家で、大安寺はがん封じで有名なお寺だ。ちなみに、御祈祷はサブスク方式になっていて、お寺に電話などで連絡すると、1年のあいだ何度でも祈祷を繰り返してくれる仕組みになっているそうだ。