職場で機嫌が悪い人は「大人のぬいぐるみを着た赤ちゃん」である…自分で自分の機嫌を取るために必要なこと

AI要約

「機嫌がいい」状態でなくなると、人はストレスホルモンが分泌されて自律神経の交感神経が強く反応し、身体にダメージを与えることがある。

外的なストレッサーがすべて悪いわけではなく、ストレスは成長や強さにつながる重要な刺激である。

心のストレス状態をなくし、心地よい気持ちを保つことが健康維持や業務上の重要なポイントである。

健康を維持するためにはどうすればいいか。産業医の辻秀一さんは「機嫌良くいることは、健康のためにも重要だ。ストレスを感じて機嫌が悪い状態が続くと、自律神経が活発化しすぎて身体にダメージを与える。」という――。

 ※本稿は、辻秀一『「機嫌がいい」というのは最強のビジネススキル』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■“disease”=心が穏やかでないこと

 「病は気から」という言葉をご存じだろうか? さまざまな病気は、人間の気、すなわち気持ちや気分からきているのだという長年にわたる経験から明らかにされている事実がある。

 英語では病気のことを「disease」というが、この言葉は「dis」と「ease」の組み合わせ。つまりは、「ease」ではないと病気だという意味だ。「ease」とは、おだやかな心の状態のことで、すなわち「機嫌がいい」こと。海外でも、人類はこの仕組みを経験にもとづき知っていて、言葉にまでしているということになる。

 みなさんは「機嫌がいい」状態ではなく、心に揺らぎや囚われのストレスがあり機嫌が悪いとどうなるだろうか? ストレスを感じるとドキドキして動悸がしたり、冷や汗が出たり、呼吸が浅くなって息苦しくなったり、夜眠れなかったり、肩が凝ったり、胃腸の調子が悪くなったり、血圧が上がったりした経験はないだろうか?

■機嫌が良くない状態が続くと身体はダメージを受ける

 もしなかったとしても、想像してみてほしい。もし、あなたが映画監督、あるいは漫画家だとして、主人公が機嫌悪く、ものすごいストレスを感じているときに、主人公をどのように表現するだろうか? おそらくさきほどのような症状をもって表現するのではないだろうか。どうして、そのような身体症状を想像するのかというと、ストレス状態は人間の自律神経を揺さぶるということを自分の経験上だれもが知っているからなのだ。

 「機嫌がいい」状態でなくなると、人はストレスホルモンが分泌されて自律神経の交感神経が強く反応し、自らの生命を維持しようとしてさまざまな症状を惹起するのだ。すなわち、それは生きているという証拠でもある。医学ではこれを「恒常性」と呼んでいる。外界からの刺激に対して、自分自身の命を保つためにこうして反応するのだ。

 しかし、その状態が長く続くと、人の身体にはしだいにダメージを与えていくことになる。だからこそ、強いストレスを感じたら、その後には「機嫌がいい」リラックスな状態がやってこないと、さまざまな病気になってしまうのだ。

 常に「機嫌がいい」状態にいるのは難しいが、この自律神経が過剰に刺激されて身体にダメージを受けるストレス状態ばかりが続くことはやはり避けたい。

■外的な「ストレッサー」のすべてが悪なのではない

 さて、わたしたちが「ストレス」という言葉を使うとき、外的な「ストレッサー」と感じている心のストレス状態を混同してしまっていることが多い。先述した身体反応は心の状態に揺らぎや囚われのストレス状態を感じると、さまざまなホルモンを介して自律神経が過剰反応をするのだ。

 ただし、外的なストレッサーがすべて悪なのではない。ストレッサーは人間にとっての刺激であって、それが成長につながったり、強くしなやかになるために重要だったりする。

 無菌室にいると、人は免疫力を獲得できずに余計に弱くなる。たとえば、それは子どもにとっては勉強、アスリートにとっては練習、ビジネスパーソンにとっては仕事だったりする。

 それらのストレッサーがなければ、知識や知能は向上しないだろうし、技術や体力もアップしない。仕事のストレッサーがなければ生活もできないし、人間的成長も得られないだろう。

 もちろん、理不尽な外的ストレッサーはよくないし、できれば避けたいし、それはないほうがいい。しかし、外的なストレッサーと心のストレス状態はパーフェクトイコールではない。身体的なダメージは外的なストレッサーの存在ではなく、「機嫌がいい」を失った心のストレス状態によるものだと知っていることが重要だ。

 どうやって自分の機嫌を自分でとり、少しでも心のストレス状態をなくしていって、身体のダメージを回避できるかも、ビジネスパーソンが長く健康でいい仕事をするためには極めて大事だということがおわかりだろう。