30代で「脳梗塞→寝たきり」から奇跡の復活を遂げた男……病床で彼を支えた意外な「命綱」と「回復の決め手」

AI要約

39歳の時に脳梗塞で倒れ、左半身麻痺になった著者が、独自の介助技術を編み出し、見事復活を遂げるまでの過程を明かす。

麻痺の困難さや介助の重要性、家庭での苦労、そして介助技術の効果について詳しく説明。

脳梗塞生還者の体験に基づいた介助法により、著者は自力で歩けるまで回復し、仕事に復帰することができた。

30代で「脳梗塞→寝たきり」から奇跡の復活を遂げた男……病床で彼を支えた意外な「命綱」と「回復の決め手」

 毎年だいたい6万人が命を落とす「脳梗塞」。脳の血管が詰まってしまう恐ろしい病気だが、30代でこの病に襲われ、一時「寝たきり」となりながらも見事復活を遂げたのが、本稿著者の根津良幸氏だ。その回復を後押ししたのは、患者としての体感や経験をもとに病床で編み出した独自の技術だった。

 39歳の時に、私は脳梗塞で倒れ左半身麻痺(まひ)になりました。「左半身麻痺」と言うと、みなさんは、体の左半分だけが動かない(でも、右半分は動く)状態を想像するかもしれません。

 現実はまったく異なります。体の部位によっては右半身まで麻痺がおよんでいる箇所もあり、全身がしびれているような感じがしました。急性期には、右手にもまったく力が入りませんでした。

 麻痺があるので起き上がれません。一日のほとんどをベッド上で寝て過ごすことになり、すぐ褥瘡(床ずれ)ができました。とくに患側(かんそく/麻痺がある側)にはあっという間にできたのです。褥瘡の痛みはまさに地獄で、寝返り介助の大切さを実感しました。

 でも、全身がしびれているので、介助で寝返りをしたり、ベッド上に起こされたりするのが苦痛でたまりませんから、無意識のうちに体に力が入って、介助に抵抗してしまいました。

 いったん介助で体を起こされると、サイドレールが私の「命綱」になります。サイドレールとは、病院のベッドや介護用ベッドの側面(すなわちサイド)に設置する柵のような用具です。ベッド上に寝ている人が下に転がり落ちないように守ったり、立つ・座るといった動作のときに支えとして利用されます。

 私の場合は、介助を受けてベッド上に座らせてもらっても、サイドレールを握らないと患側へ倒れるので、必死でしがみついていました。サイドレールには私の全体重がかかるため、ついにすっかり変形して、抜けなくなりました。

 急性期をすぎ、退院して帰宅すると、新たな困難が待っていました。暖かい日はいいのですが、気温が下がると麻痺が強くなり、より手厚い介助が必要になります。我が家で介助にあたれるのは妻だけでしたが、彼女はヘルニアを患っていて、日によって腰の調子がよかったり悪かったりします。しかも当時は子どもが生まれたばかりで、育児もせねばなりませんでした。

 そんなとき必死に考え続けてできたのが、拙著『写真と動画でわかる!  埼玉医大式 力がいらない介助技術大全』で紹介している数々の介助技術です。

 妻に筆談で手順を伝えて介助してもらい、リハビリに励んだ結果、私は自力で歩けるまでになり、仕事に復帰することができました。今の私があるのは、本書で紹介する介助法のおかげといっても過言ではありません。

 詳しい経過は以前、<年間約6万人が死亡…「脳梗塞」生還者が体験した「地獄のような麻痺の世界」>にて記事化されています。