“約80倍”に急増「カメムシ」大量発生で対策呼びかけ 市街地にも飛来で殺虫剤や虫よけの売り上げ3倍に【愛媛発】
2024年、愛媛県でカメムシが大量発生、農作物に影響を及ぼす。農家は対策に追われる。
ビワの栽培農家ではカメムシの被害が深刻化し、出荷量が減少。農薬の使用にも限界がある。
愛媛県病害虫防除所による調査では、カメムシの数が前年比で80倍に増加していることが明らかになった。
2024年、愛媛県でも「カメムシ」が大量発生している。その数は2023年の80倍ともいわれる。ビワなどの農作物にも影響が出ていて、県は6月7日にカメムシの注意報を出し、袋がけや薬剤の散布など対策を呼びかけている。
愛媛・伊予市双海町串の「ふたみファーム」はビワやかんきつ、キウイなどを栽培している。
ビワの実を守る袋の中からカメムシが出てきた。実の色を確認するため破った袋の隙間から入り込んでしまうのだ。
また、袋の上からも果汁を吸ってしまう。カメムシに果汁を吸われたビワは、へこみや黒ずみができ、出荷できない。
ふたみファームの村上慶真さんは、2024年のカメムシ被害は「異常」だという。2万弱ほどの袋をかけて回ったが被害は防げず、「なかなか難しい。なかなか厳しい」と心情を吐露した。
唐川ビワの出荷は終盤だが、2024年の出荷量は、カメムシなどの被害により例年と比べ3~4割減っているという。
また「紅まどんな」のブランドでも出荷される愛果28号の園地でも、保護ネットの上のあちこちにカメムシが見られた。
本来はこの時期、新しい芽の先に緑の小さな果実を付けるが、新芽の先の汁をカメムシに吸われてしまったため、実がつかず茶色く枯れてしまっている。出荷量は、2023年よりも減少する見込みだ。
農薬は5月下旬に1回使ったものの、「虫がわいたから、カメムシがわいたから農薬使い放題で使うわけにはいかない。安心・安全な果実を作ってお客様に届けるというのが僕らの仕事、基本中の基本なんで」とふたみファーム・橋本勲社長は話す。
12月初旬の出荷まで、不安な日々が続く。
農家も頭を悩ませるカメムシが、実際どれくらい増えているのか、愛媛県病害虫防除所・﨑山進二係長に話を聞くと、場所にもよるが例年の“数十倍”だという。
県病害虫防除所は週に1回程度、カメムシを定点で調査している。
調査で使うのはフェロモンの匂いでおびき寄せたり、夜に光で集めたりする装置だ。
カメムシの中でも最も果樹に被害を及ぼすのが「チャバネアオカメムシ」だ。
県病害虫防除所の調査によると、2024年に越冬した個体の県平均は2平方メートルあたり3.88匹。2023年の0.05匹に比べて、約80倍に急増している。
﨑山係長によると、今いるカメムシは2023年の夏に生まれた虫のため、今増えたのではなく、2023年の夏後半に多かったということだ。
実は、2023年の秋はカメムシのエサになるスギやヒノキの実が豊作で、カメムシが大量に増えた分、多くが冬を越えて生き残ったと考えられている。