「007」も愛したカクテルの王様、マティーニを名物に マンダリン オリエンタル 東京

AI要約

マンダリン オリエンタル 東京のオリエンタルラウンジでは、世界中のクラフトジンを楽しむことができ、特に「マティーニワゴン」が注目を集めている。

マティーニはジンとベルモットを混ぜたシンプルなカクテルであり、バーテンダーの腕が試される一方、様々なバリエーションが存在する。

記事ではマンダリン オリエンタル 東京のオリジナルクラフトジンを使用した「朝霧マティーニ」の作り方や味わいについても紹介されている。

「007」も愛したカクテルの王様、マティーニを名物に マンダリン オリエンタル 東京

編集長がホテルのおいしいものや楽しみを探しに行く「hotel TIPS」。今回は「カクテルの王様」といわれるマティーニの奥深さを知りたいと思い、日本橋にあるマンダリン オリエンタル 東京(東京・中央)を訪れました。

最近、お酒の世界でホットな話題になっているのがクラフトジンです。生産する土地の風土や作り手のこだわりが込められた個性豊かなジンで、今や世界的なブームとなり、日本でも各地で蒸留所が誕生しています。

マンダリン オリエンタル 東京の38階にある「オリエンタルラウンジ」では世界中のクラフトジンを50銘柄以上楽しめます。2023年3月、それまでのクラシックなラウンジのスタイルを一新し、内装は緑やパステルカラーを使った明るく華やいだ雰囲気に。お酒はジンを看板商品に掲げ、クラフトジンとジンベースのカクテルを豊富にそろえました。その機会に合わせてアイコンとして導入したのが、「マティーニワゴン」です。

広いウインドー越しに広がる東京の風景を眺めていると、バーテンダーの長谷川和乃さんが立派な木製ワゴンを押して、しずしずとテーブル脇に歩いてきました。美しい装飾が施された台上にはグラスやオリーブ、お酒の瓶などがずらりと並んでいます。

「こちらが『マティーニワゴン』です。細部までこだわり抜いた、オリエンタルラウンジオリジナルのワゴンなんですよ」

新型コロナウイルス感染拡大のさなか、オリエンタルラウンジのマネージャーらは、より多くのお客に親しまれ、愛してもらえる空間になるようにと、マティーニワゴンを計画しました。「目の前でお好みを聞きながら仕上げていきますので会話が増えます。ワゴンを見て『私も飲んでみたい』と興味をもっていただくこともあります」

カクテルの代表格であるマティーニの魅力に触れつつ、ジンの奥深い世界ものぞけるワゴンは、まさにラウンジの花形となりました。

マティーニはジンとフレーバーワインであるベルモットを混ぜてつくるシンプルなカクテル。蒸留酒であるジンがベースなのでアルコール度数は高めで、ハーブやスパイスが香る爽やかできりっとした味わいです。

そのシンプルさゆえに、バーテンダーの腕が試されるカクテルといわれるマティーニですが、一方で、ジンをウオッカや日本酒に変えたり、エスプレッソコーヒーや果物を合わせたり、「ビターズ」と呼ばれる香りがついたリキュールでアクセントを付けたりと、バリエーションが豊富であるのも特徴です。

今回は長谷川さんおすすめの「朝霧マティーニ」をつくってもらいました。材料はいずれもマンダリン オリエンタル 東京のオリジナルである、クラフトジン「ASAGIRI 朝霧」とベルモット「マンチーノ 桜&すみれ」です。

お客は「イチゴと黒胡椒(コショウ)」「煎茶と抹茶」「黒胡麻(ゴマ)」の3種類のビターズのうち1つを選びます。グラスも3つ用意されたうちの1つをチョイス。そして微妙な味わいやアルコール度数などの要望を伝えます。そうしてできあがった自分にぴったりの1杯を、心ゆくまで楽しめるのです。

呉服の街・日本橋をイメージしたクラフトジンを使っているとあって、白檀(びゃくだん)やローズゼラニウム、すみれなどのフローラルでオリエンタルな香りがほのかに漂います。味わいはすっきりと目が覚めるほどにシャープ。マティーニの身上はこの研ぎ澄まされた味わいにあると実感しました。

映画のワンシーンを彩るカクテルの中でも、マティーニほど有名なものはないでしょう。「麗しのサブリナ」「七年目の浮気」……、そして何よりもスパイ映画「007」ではジェームズ・ボンドが好んで飲むカクテルとして、広く知られています。だれが手にしても絵になるところも、やはり「王様」であるゆえんでしょう。

文:THE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳

※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。