持ち家は賃貸住宅や公営住宅よりも長生き…では賃貸と公営では?

AI要約

世界保健機関(WHO)が高齢者向けの健康的な住環境に関する8つのトピックのうちの1つが「住居」であり、持ち家と賃貸住宅の居住者の死亡リスクについての研究結果が報告された。

研究では、4万4007人を対象に、持ち家、賃貸住宅、公営住宅の形態別で死亡リスクが比較され、賃貸住宅の居住者は持ち家の居住者に比べて死亡リスクが高いことが示された。

しかし、公営住宅の居住者は賃貸住宅の居住者と比べて死亡リスクが低下しており、その理由として、公営住宅の周辺環境が身体活動や社会参加を促進している可能性が考えられている。

持ち家は賃貸住宅や公営住宅よりも長生き…では賃貸と公営では?

【役に立つオモシロ医学論文】

 世界保健機関(WHO)は、2007年に「高齢者にやさしい都市(エイジフレンドリーシティー)」という考え方を提唱し、高齢者が健やかで安心して生活できる街づくりに欠かせない8つのトピックを公表しました。そのうちのひとつが「住居」です。

 これまでの研究報告において、家賃費用の増加が健康状態の悪化と関連する可能性が指摘されていました。また、持ち家に居住している人は、賃貸住宅に居住している人と比べて経済的に裕福であり、良好な健康状態を維持できる可能性があります。そのような中、居住環境と死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、「サイエンティフィック・リポーツ」という学術誌に2024年3月30日付で掲載されました。

 この研究では、日本に在住している4万4007人が対象となりました。このうち、持ち家の居住者は3万7761人、賃貸住宅の居住者は2280人、公営住宅の居住者は2490人でした。また、介護保険のデータベースから死亡記録が調査され、住居の形態と死亡リスクの関連性が解析されています。なお、研究結果に影響を与え得る年齢や性別、婚姻状況、最終学歴、就労状況などの因子について、統計的に補正して解析されました。

 9年にわたる追跡調査の結果、死亡のリスクは、持ち家の居住者と比べ、賃貸住宅の居住者で1.45倍、公営住宅の居住者で1.17倍、統計学的にも有意に増加しました。

 ただし、公営住宅の居住者では、賃貸住宅の居住者と比べて、死亡リスクが20%低下することも示されました。

 論文著者らは、賃貸住宅の居住者と比べて、公営住宅の居住者で死亡リスクが低下した理由として、「公営住宅の周辺は計画的に開発されており、身体活動や社会参加を促す環境が充実している」と考察しています。

(青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)