リコー「待ったなし」のジョブ型人事制度導入から2年、本当に「若手が働きたい会社」になれたのか?

AI要約

リコーグループは、2020年にOAメーカーからデジタルサービスの会社への変革を宣言し、ジョブ型人事制度を導入した。この変革により、若手管理職の登用が進んでおり、自律的なキャリア形成を促す仕組みも整えられている。

リコー式ジョブ型人事制度では、管理職から外れた場合も再登用の可能性が残されており、全管理職ポジションの条件が公開され、社内公募が充実している。若手の管理職比率も2年で4.4倍に増えている。

リコーは全社的な変革を進めるため、従来の年功序列や過去の実績重視の制度から脱却し、自律的な判断力や幅広い知識を求めるようになった。未来のデジタルサービス企業への変革が進行中である。

リコー「待ったなし」のジョブ型人事制度導入から2年、本当に「若手が働きたい会社」になれたのか?

 連結売上高約2兆円、グローバルで約8万人を擁するリコーグループ。2020年、同社は複写機需要の減少を背景に、OAメーカーからデジタルサービスの会社へ変革を宣言した。会社が変わるために、核となったのは人事戦略だった。2022年には「リコー式ジョブ型人事制度」を導入。他にも自律型人材の育成、リスキリングなどを推進している。年功序列から脱却して若手管理職を登用するという目的は、2年間でどこまで達成できたのか。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

● OAメーカーからデジタルサービスの会社へ

 リコーは2020年、OAメーカーからデジタルサービス企業へと変革を宣言した。背景には、ペーパーレス化による複写機需要の減少がある。2022年までに、デジタルサービス関連の売上比率は約40%まで成長。2025年度までに60%へ引き上げる計画だ。

 会社が変わると同時に、社員に必要なスキルも大きく変化している。複写機販売と異なり、デジタルサービスでは顧客ニーズが多様になる。より幅広い知識と自律的な判断力が求められるようになった。全社員がデジタルサービスに直接関わるわけではない中で、いかに全社的な変革を進めていくかも課題だという。

 リコーは、どのように人事制度を変革してきたのか。同社CHRO(最高人事責任者)の長久良子さんが、Works Human Intelligence社のCOMPANYユーザー会で8月30日に行った講演と、事後取材で語った内容を元に紹介する。

● 「リコー式ジョブ型」で年功序列から脱却できたのか

 デジタルサービス企業への変革に向けて、リコーが導入した主要施策の一つが、2022年4月に始まった「リコー式ジョブ型人事制度」だ。

 ポイントは、ジョブ型の導入自体が目的ではなく、変革の手段としてジョブ型が有用だったということだ。従来の制度では、若手の昇進機会が限られ、モチベーションの低下や離職につながっていた。また、過去の実績を重視する傾向やポジションの既得権益化が、適所適材な人材配置を阻んでいた。真に貢献している社員が報われ、チャレンジを後押しできる会社にならなければ、変革など成し得ない。

 リコー式ジョブ型の大きな特徴は、ドラスティックな変化を避け、メンバーシップ型の要素も残している点だ。給与体系はブロードバンド型を採用し、大幅な給与変動を抑制。また、管理職のポジションを外れる場合にも配慮がある。管理職から外れた場合、すぐに非管理職とはならず、「AE(アソシエイト・エキスパート)」というポジションに移行。ここで3年間の再チャレンジ期間が設けられ、成果を上げれば管理職への再登用の道が開かれる。成果が上がらなかった場合のみ、最終的に非管理職となる仕組みだ。

● ジョブ型導入から2年で、30代の管理職比率が4.4倍に

 自律的なキャリア形成を促す仕掛けも用意している。例えば、社内公募の充実。全管理職ポジションのジョブディスクリプションを作成・公開し、どんなスキルや経験を積めば、そのポジションにたどり着けるのかを可視化している。また、月1回以上の1on1ミーティングを推奨し、90%以上の社員が実施しているという。

 ジョブ型導入から2年。30代の管理職比率は2.5%から10.9%に上昇するなど、若手の積極的な登用が進んでいる。将来的には全管理職の2割程度を公募にする考えもあるという。