あなたも「スマホゾンビ」かもしれない。7冊の本で考えるトラップだらけのデジタル社会
道具を使うことで脳内のシナプスのネットワークが変わり、デジタルツールによる脳の変化は我々が理解している以上に影響を及ぼしている可能性がある。
人間と道具の関係は「嵌入接合」と表現され、人類史は発明や発見によって大きく進化してきた。アンディ・クラークが提唱する「生まれながらのサイボーグ」の概念が紹介されている。
歴史上の重要な発明物を振り返り、火からAIまで、科学的世界観の発明やデジタルツールの進化によって人類が常に更新されてきたことが示唆されている。
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この連載は、編集工学研究所・ほんのれん編集部がお届けします
yamamoto :
昨日もまたスマホ画面を眺めてるだけで休日が終わってしまいました......。
umeko :
やめようと思ってもやめられない時って多いよね。やめさせないことを目指して作られたアプリやサービスも増えてきてるし。スマホそのものが超強力なツールだからこそ、気をつけてないと自分をまるごと乗っ取られちゃう。
nire_t :
道具を使ったり、文字を読んだりすることで、脳内のシナプスのネットワークが組み替わるって聞いたことある!
道具が脳を変えるんやとしたら、デジタルデバイスによる脳の変化って、私たちが思うよりもはるかに大きいんかも。今はまだデジタル時代の歴史が浅いから、表には見えてこないだけのことも多いやろうな。
ojima_t :
デジタルツールとどう付き合うかって、もしかしたら、これからの時代にどう生きていきたいかっていう問いなのかも......。
人間は道具と一緒に進化してきた。アメリカの哲学者アンディ・クラークは、それを「生まれながらのサイボーグ」と表現した。
道具を使うとき、私たちはそれをまるで身体の一部のように感じる。眼鏡を意識せずにレンズ越しにものを見れたり、ハサミに集中せずとも紙を切ることができたりするように、ツールは自分の延長であって、私たちは道具含みで「自分」になる。
こうした人類と道具の関係性は、「ダブテーリング(dovetailing)」という言葉で表される。日本語では「嵌入(かんにゅう)接合」だ。脳にICチップを埋め込んだり、機械を接続して身体拡張したりするまでもなく、私たちは誰もが道具と共生するサイボーグなのだ。
人間が「生まれながらのサイボーグ」なのだとすれば、つまりは道具の発明や発見こそが、人類史を進めてきたということでもある。
『人類を変えた7つの発明史』(Rootport 著)は、火からAIまで、歴史を動かした発明の数々を一挙に概観する。
10万年前の火の使用に始まり、BC2500年頃に文字が、15世紀に活版印刷が、そして17世紀に科学的世界観そのものが発明されて、人類史の転換点をつくってきた。
科学が発明されてからは、社会が変化するスピードが一気に加速する。19世紀の鉄道の発明につづいて、19世紀から20世紀にかけてはコンピューターが登場。
その後のインターネットの普及とあいまって、誰もがネットワークに常時接続し、リアル世界とデジタル世界を行き来しながら生きる社会を生み出した。技術や世界観の発明が、人々の日常のあり方を更新してきたことが分かる。
振り返ってみると、火や文字や印刷技術が発明されたタイムスパンに比べて、デジタルツールの進化は圧倒的に早かった。そのスピードに、生身の人間である私たちは、ついていけているのだろうか。