Googleの6.8型ハイエンド大画面スマホ「Pixel 9 Pro XL」、電子書籍での使い勝手は従来モデルとどう変わった?

AI要約

Googleの「Pixel 9 Pro XL」は、Android 14を搭載した6.8型のスマートフォンで、AIサービス「Gemini」に最適化されている。

Pixel 9 Pro XLは従来モデルと比較して、筐体デザインが一新されており、スペックも順調に向上している。

電子書籍ユースにおいては、Pixel 9 Pro XLは機能面や使い勝手において特に大きな問題はないが、価格面でのネックがある。

Googleの6.8型ハイエンド大画面スマホ「Pixel 9 Pro XL」、電子書籍での使い勝手は従来モデルとどう変わった?

 Googleの「Pixel 9 Pro XL」は、Android 14を搭載した6.8型のスマートフォンだ。新たに発表された「Pixel 9」シリーズの中ではもっともハイエンドかつ大画面のフラグシップモデルで、同社のAIサービス「Gemini」に最適化されているのが大きな目玉だ。

 AIまわりの機能が何かとクローズアップされる本製品だが、実際の利用においてはすべてにAIが関わるわけではなく、それらを省いた従来モデルからの純粋な進化が気になるという人も多いだろう。特に電子書籍ユースにおいては、AIによる直接的な恩恵を被るわけではないのでなおさらだ。

 今回は筆者が購入した実機を用い、電子書籍ユースにおける使い勝手を、従来モデルに当たるPixel 8 Proと比較する。

■ 筐体デザインが一新。ハードウェアスペックは順当に向上

 まずは従来モデルにあたるPixel 8 Proとの比較から。

 従来のPixelシリーズは、無印が標準モデル、「Pro」がつくのが大画面かつハイエンドモデルという位置づけだったが、今回のPixel 9はハイエンドの標準サイズが「Pro」、ハイエンドの大画面モデルが「Pro XL」という表記に改められた。従ってPixel 9 Proではなく、今回紹介するPixel 9 Pro XLこそが、従来のPixel 8 Proの後継ということになる。

 そんな本製品は、筐体のデザインが従来から一新されている。背面のカメラ部は、側面から連なる曲線主体のカメラバーが廃止され、段差をむしろ強調するような、レンズ部が突出したデザインへと変更されている。従来よりも大きくなった段差をなるべく目立たせないという意図もあるのかもしれない。

 サイズや重量は多少の違いはあるが、これはデザイン変更に起因するもので、使い勝手に影響を与えるレベルではない。とはいえ、重量がさらに増し(公称221g。従来は213g)、ライバルとなるiPhone 15 Pro Max(公称221g)と横並びになったのはマイナスだ。わずかであっても軽いというアドバンテージを、自ら潰してしまった格好だ。

 そのほかは順当なスペックアップで、CPUはTensor G3からG4へと変更されているほか、Wi-Fiは802.11be(Wi-Fi 7)に初対応。またUSB PDによる急速充電も最大37Wへと高速化されている。ちなみにメモリも12GBから16GBへと増量されているが、この増加分は本製品の売りであるAI処理に割り当てられているようで、パフォーマンスへの影響はあまりみられない。詳しくはベンチマークの項で後述する。

 なお従来モデルでは、USB Type-Cポートを挟んでスピーカーらしき穴が左右に配置されていたが、本製品は右側の穴がSIMカードスロットへと変更されている。これだけ見るとスピーカーが2基から1基になったように見えるが、実は従来のPixel 8 Proでも右側の穴からは音が出ておらず、また本体を横向きにした場合は上部のスピーカーと合わせてステレオ再生が可能なので、機能が後退したわけではない。

■ ベンチマークスコアは数%~十数%の微増。見た目はiPhone?

 では実機を見ていこう。本製品はカメラバーまわりのデザインが大きく変更されていることに加えて、従来は丸みを帯びていた側面が、垂直にカットされたデザインへと変更されている。これはかつてiPhone 12→13にかけて起こったデザインの変更に酷似している。

 もっともそのせいで、数値上は8.9mm→8.5mmと薄くなっているはずの筐体が、実際に手に持つとむしろ厚みが増したように感じてしまう。従来モデルは側面が丸みを帯びていることで、背面全体を薄く錯覚させる効果があったということだろう。背面中央付近だけを比較すると、確かに本製品のほうが薄いことから、体感的な厚みはデザインに大きく左右されることを実感させられる。

 一方で側面が垂直にカットされたデザインになったことで、うつ伏せの状態から持ち上げる時に指先でつまみやすくなっている。ツルッと滑って落とすことも減り、ハンドリング面はより容易になった。

 こうしたデザイン変更の結果として、本製品はiPhone 15 Pro Maxと酷似した外見を持つに至っている。カメラ周りこそまったく異なるデザインだが、垂直にカットされた側面はもちろん、継ぎ目部分の樹脂パーツ、さらに厚みなどは、見るからにそっくりだ。画面を消灯した状態で正面から見ると、まったく見分けがつかないほどで、両者さまざまなデザインを試した結果たどり着いた先がほぼ同じというのは興味深くはある。

 ベンチマークについては、どのアプリやツールを使ってもスコアはおおむね数%~十数%の微増といったところ。ラインナップの中ではハイエンドだが、パフォーマンスよりもAIの処理速度にフォーカスした製品ということで、このスコアはある意味で納得がいく。

■ 単ページ表示に適したサイズ・解像度。気になるのは重さ

 さて本題、電子書籍ユースにおける使い勝手について見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。

 画面サイズは6.8型。電子書籍においてはコミックの単ページ表示は可能だが、見開き表示には厳しいサイズだ。解像度は486ppiと高精細なので、クオリティ面の問題はまったくない。雑誌など判型が大きいコンテンツを表示した場合でも、細かい文字を拡大せずに読むこともできる。

 画面の明るさも3,000cd/平方m(ピーク輝度)と十分。もっとも直射日光下で読書するのでもない限り、電子書籍ユースでここまで輝度を高くすることは考えにくいので、最大輝度が低い他製品と比較して、強力なアドバンテージになるというわけでもない。最大輝度が明るいぶん輝度を下げた時のバッテリの持ちがよくなる可能性はあるかもしれない。

 テキストコンテンツについては、画面が縦に長いせいで視線の移動距離も長く、そのままでは目が疲れやすい。上下に余白を設け、視線移動が短距離で済むよう調整してやるとよいだろう。このあたり、上下の余白が大きいとせっかくの大画面が無駄に見えるが、天地いっぱいまで表示すると視線移動に疲れるという、相反した性質があるのは、昨今のどのスマホも同様だ。

 やや気になったのが、画面の四隅が従来モデルよりも丸みを帯びており、そのぶん非表示部分が広くなっていることだ。実際には、この四隅ギリギリまで電子書籍のページが表示されることはあまりないので、実害はほぼないのだが、画面が真四角であれば表示されるはずの部分が見えないこと、またその面積が今回のモデルチェンジで広くなったのはやや気がかりだ。

 以上のように、雑誌のような大判のコンテンツは別にして、電子書籍を楽しむことに大きな支障はないのだが、やはり気になるのは公称221gという重量だ。画面の大きさが求められるコミックはさておき、読書の対象が主にテキストであれば、もう少し小型かつ軽量な端末をチョイスしたほうが、快適な読書が楽しめるかもしれない。

 また本製品はMagSafeと互換性があるワイヤレス充電規格「Qi2」の搭載が見送られており、背面にマグネットで吸着させられるMagSafe互換のベルトやバンドなどのツールは利用できない。搭載されていればほかのAndroidスマホとの差別化要因になり得たポイントを自ら手放しているのは、少々もったいない。端末の保持しやすさが重視される電子書籍ユースではなおさらだ。

■ 電子書籍ユースで致命的な欠点はなし。ネックは価格か

 以上のように、電子書籍ユースにおいては基本性能は高く、またiPhoneと比べると音量ボタンでのページめくりが可能だったり、指紋認証でこまめにロック解除できる強みもある。本製品にしかない特徴はなく、積極的に選ぶべき理由は見当たらないが、致命的な欠点があるわけではないので、総合的に判断して本製品をチョイスするのであれば、電子書籍を楽しむことに障害はない。

 ネックとなるのは価格だ。最小容量の128GBモデルは17万7,900円ということで、従来のPixel 8 Pro(15万9,900円)との比較ではプラス1万8,000円。このPixel 8 Proにしても、その前のPixel 7 Pro(12万4,300円)から見てプラス3万5,600円アップしているので、2世代前との比較では5万円以上も値上がりしており、かつてのリーズナブルさは見る影もない。このあたりを納得して購入できるかどうかが、1つの分岐点となるだろう。

 なお本製品の売りであるAIを用いた機能だが、電子書籍ユースにおいては特に関与する部分は見られない。今後AIがより浸透してくれば、電子書籍ユースでも何らかの恩恵を被る可能性はあるが(たとえばKindleで登場人物やキーワードを本文から抜き出して整理できるX-ray機能などはそれに近いだろう)、それはまだまだ先の話と言えそうだ。