「丼丸」から学ぶ「食品ロス削減をビジネスの中に最初から組み入れよ」

AI要約

サステナビリティー(持続可能性)を実現するための大きな問題の一つに、食品ロスがある。食品ロス削減のためにデジタル技術の活用が期待されており、丼丸ブランドの海鮮丼テイクアウト専門店を展開するササフネ創業者・会長の大島純二氏に焦点を当てた取材が行われた。

「安くて美味しい海鮮丼」を提供することで消費者に喜んでもらいたいという思いが丼丸の存在意義となっている。そのため、原価を抑えながらも高品質でボリュームのある海鮮丼を提供する取り組みが行われている。

具体的には、魚介類の無駄をなくし、端材を利用した商品開発やワンコインで提供できるような原価管理が行われており、これによって丼丸の人気が高まっている。

「丼丸」から学ぶ「食品ロス削減をビジネスの中に最初から組み入れよ」

 サステナビリティー(持続可能性)を実現するための大きな問題の一つに、食品ロスがある。どう削減していけばよいのか。対策としてデジタル技術の活用にも期待がかかる。そうした中、この問題に真正面から取り組む「丼丸」ブランドの海鮮丼テイクアウト専門店を展開するササフネ創業者・会長の大島純二氏に取材する機会を得たので、食品ロス削減の核心を聞いてみた。

「安くて美味しい海鮮丼」に込められた意味とは

 今回の取材は、本サイトを担うZDNET Japan編集部に届いた一通の手紙がきっかけになった。ササフネの広報の方から寄せられたもので、2024年6月27日掲載の本連載記事「食品ロスをマインドセット転換とデジタル活用で防げ」を読んで共感していただき、「当社でも食品ロス削減に注力しているので取材の機会があれば」との内容だった。いわゆるユーザー企業からの申し入れに興味を抱いたのでコンタクトを取ったところ、大島氏に取材する機会を得ることとなった(写真1)。

 丼丸の海鮮丼のテイクアウトは、多くの人が利用したことがあるだろう。45年前に東京の下町でスタートした寿司店(ササフネ設立)から生まれた丼丸は、同社独自のフランチャイズチェーン(FC)展開によって、今では全国におよそ400店舗と広がっている(写真2)。

 今回は食品ロス問題をテーマにした取材だが、まずは「丼丸のお店が全国に広がるほど、消費者に受け入れられているのはなぜか」と聞いたところ、大島氏は次のように答えた。

 「安くて美味しい海鮮丼を提供して、お客さんに喜んでもらいたい。その一点でこれまでやってきた」

 すなわち、丼丸ブランドの存在意義について尋ねたところ、同氏の答えはいかにも当たり前のように聞こえるが、さにあらず。「安くて美味しい海鮮丼」の一言に、食品ロス削減を含めて全ての意味が込められている。どういうことか。同氏の話を基にひもといていこう。

 安くて美味しい海鮮丼を提供するために、大島氏がまず考えたのは、もともと自らの寿司店で税別1000円で提供していた海鮮丼と同等の品質とボリュームを、原価をギリギリまで抑えて税別500円のワンコインで提供できるようにすることだった。そこには、「コストパフォーマンスの高い海鮮丼を提供すれば、お客さんに必ず喜んでもらえる」(大島氏)との確信があったようだ。「海鮮丼」の潜在的な商品力を見抜いていたわけだ。

 だが、原価をギリギリまで抑えて半額にするにはどうすればよいのか。そこで同氏が取り組んだのは、魚介類の原材料を無駄にせず、徹底的に使い切ることだった。その代表例が「バラ丼」だ。魚介類の端材を利用したものだが、具材のバリエーションに富んでいることから、全部で80種類にも及ぶ海鮮丼のメニューの中でも人気商品となっている(写真3)。

 もっとも大島氏によると、「バラ丼はもともと賄い食だった」とか。「それを商品にすることで原材料を無駄にせず、原価を抑えながらも魅力的な商品づくりに挑んだ」結果、どの種類の海鮮丼もワンコインで提供できるようになり、丼丸の人気に一気に火がつく形となった。