OpenAIの検索エンジン「SearchGPT」、グーグル検索と違う5つのこと

AI要約

OpenAIが開発したChatGPTに検索エンジンが搭載されたことが正式発表され、1万人のユーザーがテスト中。

SearchGPTとGoogle検索の5つの違いが指摘され、検索結果や広告表示、文脈の維持などが比較されている。

ハルシネーションの問題やローカル検索、eコマース分野におけるGoogleの優位性も述べられている。

OpenAIの検索エンジン「SearchGPT」、グーグル検索と違う5つのこと

 ここしばらく、「ChatGPT」に検索エンジンが搭載されるといううわさが流れていたが、ついに開発元のOpenAIから正式に発表された。現在、1万人のユーザーがプロトタイプをテストしているという。

 筆者はまだウェイトリストに登録している段階だが、OpenAIが公開した検索の例や、ChatGPTでOpenAIの最新モデル「GPT-4o」を選択すると利用できる検索機能「Browse with Bing」をもとに、OpenAIの検索エンジンについて現在の印象をまとめた。OpenAIにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 SearchGPTに関して、筆者が特に知りたいと考えているのは、現在インターネット検索の90%を担う「Google検索」との違い、そしてウェブ検索にあえてChatGPTを使うべき理由だ。

 OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるSam Altman氏は、3月にLex Fridman氏の人気ポッドキャスト番組に出演し、OpenAIも同じ問いに取り組んでいると語った。「情報を見つけ、活用し、統合するための、はるかに優れた方法があるかもしれない」とAltman氏は言う。

 OpenAIは、いずれChatGPT自体に検索機能を組み込む計画だ。まずは、これまでに分かっている情報をもとに、SearchGPTとGoogle検索の5つの違いを紹介する。

1.検索結果

 OpenAIによる検索とGoogle検索の違いとして、まず挙げたいのは検索結果のページだ。

 SearchGPTでクエリを実行すると、回答の要約と情報源へのリンクが表示される。質問に対する直接的な回答を表示することで、ユーザーの時間を節約するためだ。

 SearchGPTのウェブサイトに掲載されている検索サンプルの中に、「ミネソタで栽培するのに最も適したトマトの品種は何?」という質問がある。検索結果には、おすすめの品種として「Early Girl」「Celebrity」「Roma」「Cherokee Purple」が表示され、さらに各品種を推奨する園芸サイトへのリンクが貼られている。

 同じ質問をGoogleで実行すると、まず「AI Overview(AIによる概要)」が表示される。これはAIが生成した検索結果の要約であり、SearchGPTの検索結果とかなり似ている。ただし、Googleの場合は「People Also Ask(関連する質問)」として、検索結果のページに4つのおすすめの質問とリンクが表示される。AIによる概要で質問の答えが得られればラッキーだが、そうでない場合は検索結果をスクロールしなければならない。

 このスクロール作業こそ、OpenAIがなくそうとしているものだ。

 「欲しい情報を求めて、複数のウェブサイトを見て回らなければならないことにうんざりしている人は多いだろう」と言うのは、SEO関連ニュースサイトSearch Engine Landの編集ディレクター、Danny Goodwin氏だ。「SEO業界に限った話かもしれないが、Google検索の質については多くの不満があった。簡単な質問のはずなのに、なかなか答えが見つからない」

2.広告

 Google検索とのもう1つの大きな違いは、SearchGPTには(少なくとも現時点では)広告が表示されない可能性が高いことだ。

 そもそも、SearchGPTを利用できるのは「ChatGPT Plus」の契約者だけだ。ChatGPT Plusは月額20ドル(約2900円)の有料プランで、GPT-4oモデルに無制限にアクセスできる。

 Altman氏はFridman氏のポッドキャスト番組の中で、広告は好きではないと明言している。

 「人々がChatGPTにお金を払い、その回答が広告主の影響を受けることはないと理解しているのがいい」と、Altman氏は言う。「XやFacebook、Googleといった製品はどれも素晴らしいが、広告モデルを採用している。私はそこが気に入らない。AIの世界では、状況は良くなるところか、ますます悪くなるだろう」

 Googleは広告が大好きだ。2000年に始まった広告事業は、2023年だけで2378億ドル(約35兆円)の広告収入を同社にもたらした。

3.文脈

 OpenAIの発表によると、最終的にはChatGPT自体に検索機能が組み込まれることになる。

 そうなった場合、SearchGPTは文脈を維持した状態で、続きの質問に答えるようになるため、より会話的に検索を進められるようになる。

 「検索ボックスにキーワードやフレーズを羅列するのではなく、友人や専門家に質問するようにSearchGPTに質問を投げかけ、会話のキャッチボールをしながら答えや概要を得られるようになる」と、デジタルマーケティングエージェンシー、Chelsea DigitalのCEO、Mike Grehan氏は言う。

 OpenAIのウェブサイトに掲載されているサンプルの1つに「今週末、ハーフムーンベイでウミウシを見られるのはいつ?」という質問がある。SearchGPTの検索結果には、ウミウシの画像と、週末の土曜と日曜の正確な干潮の時刻、さらに情報源としてPacific Beach CoalitionとTide Forecastのウェブサイトへのリンクが表示される。このサンプルでは、続けて「暑くなる?」という質問が入力される。すると、SearchGPTは前の質問をふまえて、カリフォルニア州ハーフムーンベイの天気予報を表示する。

 では、Googleで「来週末、ニューヨークで何がイベントはある?」と検索し、続けて「雨は降る?」と検索したらどうなるか。検索結果に表示されるのはニューヨークではなく、現在地の天気予報だ。

4.ハルシネーション

 ハルシネーションはGoogleでもSearchGPTでも起きている。ハルシネーションとは、AIチャットボットが質問に虚偽の回答または誤解を招くような回答をする現象だ。

 GoogleのAIによる概要がリリース早々に誤情報を提供し、波乱のスタートをきったことは記憶に新しい。その後、Googleは対象のクエリを絞るなど、いくつかの調整を加え、AIによる概要を表示するクエリは全体の約8%になったと伝えられた。

 SearchGPTもハルシネーションと無縁ではなく、SearchGPTの宣伝資料でも間違いは起きている。OpenAIのブログ記事に掲載されたSearchGPTのデモ動画に、ユーザーが「8月にノースカロライナ州ブーンで開催される音楽フェスティバル」と入力し、回答が表示される場面があった。しかしThe Atlantic紙が指摘したように、検索結果に表示された「アパラチアン・サマー・フェスティバル」の日程は間違っていた。

 ChatGPTの画面には「ChatGPTの回答は必ずしも正しいとは限りません。重要な情報は確認するようにしてください」という注意書きが表示されている。SearchGPTの画面にも、同様の警告が表示されることになるのかもしれない。

5.ローカル検索とeコマース

 すべての検索が解説や説明を求めているわけではない。買いたいもの、行きたい場所を探しているときもある。この2つの分野では、引き続きGoogleが優位だ。

 「Googleショッピング」は2002年に「Froogle」としてサービスを開始した(本当の話だ)。2005年には、地元の企業に焦点を合わせたサービスが登場した。このように、どちらの分野でもGoogleには実績がある。

 OpenAIはブログ記事の中で、この2つの分野については引き続き改善に取り組むと述べた。

 筆者がChatGPTで「近くのピザ」と検索したときは、都市名か郵便番号が必要だと言われた。郵便番号を入れると、地元のピザ屋が3軒表示された。筆者の好みではない店だったが、確かに実在する店だ。

 「SearchGPTはコンシェルジュ的なサービス、Googleは拡大し続ける百科事典・地図帳・報道局と考えるといいかもしれない」とGrehan氏は言う。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。