ソニーG、第1四半期の実績は「まずもって順調」--十時社長が不安定な金融市場に対しコメント

AI要約

ソニーグループの2025年3月期第1四半期の連結業績が発表された。売上高や利益は前年同期比で増加し、特にゲーム&ネットワークサービスとイメージング&センシング・ソリューション分野が大きな増収増益を達成した。

ソニーグループの経営陣は、金融市場や為替の変化に注意を払いつつ、業績を達成するための計画を進めている。各分野の成長要因や市場動向についても言及された。

ソニーグループは今後もリスクを勘案しつつ、事業運営を丁寧に行い、経営数値目標と株主還元を強化していく方針である。

ソニーG、第1四半期の実績は「まずもって順調」--十時社長が不安定な金融市場に対しコメント

 ソニーグループは8月7日、2025年3月期第1四半期(2024年4~6月)の連結業績を発表した。ソニー連結で売上高は前年同期比2%増の3兆116億円、営業利益は261億円増の2791億円、当期純利益は141億円増の2316億円となった。ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)とイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野が大幅な増収増益を記録した。

 会見の冒頭、ソニーグループ 代表執行役 社長 COO兼CFOの十時裕樹氏は「足元の金融市場、為替、株式市場の大きな変化に触れざるを得ないと思う。この結果、米国を中心に景気が弱くなっていくかどうかが最大の関心事だが、これについては注意深く見守っていきたい。状況の変化を注意深く見守った上で、細心の注意を持って事業運営にあたっていきたい」とコメントした。

 売上高が前年同期比12%増の8649億円、営業利益が同33%増の652億円となったG&NS分野は、為替の影響や自社制作のゲームソフトウェア販売増加などにより、大幅な増収増益となった。

 「ソフトウェアタイトルでは『HELLDIVERS 2』が5月時点で想定を上回って推移していることに加え、PC版の『Ghost of Tsushima』や『Destiny 2 The Final Shape』も収益に貢献した。『PS Plus』で着実に進んでいる上位サービスへのシフトと価格改定によるARPUの向上などにより、ドルベースの売上高は前年同期比で13%伸長している」(ソニーグループ 執行役員 経営企画管理、グループDE&I推進担当、金融事業・エンタテインメント領域補佐の松岡直美氏)と背景を話した。

 音楽分野は、音楽制作におけるライブ興行収入の増加やストリーミング売り上げ増から、売上高が同23%増の4420億円、営業利益は同17%増の859億円の増収増益。「2023年のグローバルでの市場成長は、前年比で音楽制作が10%増、音楽出版が11%増となった。ストリーミングサービスにおける有料会員数の増加や新興国での市場拡大に加え、近年では音楽配信業者による価格改定の影響もあり、音楽制作では9年連続、音楽出版では11年連続で市場が成長している。中期的にはARPUの向上や新興国でのさらなる成長をドライバーに年平均成長率1ケタ台半ばから後半で市場の成長が続くとみている」(松岡氏)とした。

 映画分野は、テレビ番組の納入作品数や劇場公開作品数が減少したことにより ドルベースでは減収となったが、為替の影響により、売上高が同5%増の3373億円、営業利益は、ドルベースでの減収の影響により、前年同期から47億円減の113億円。「劇場興行収入は、主にストライキの影響により、2023年から2割程度低い水準で推移しているが、6月以降、主要スタジオからの大型作品の公開が増加しており、徐々に改善が進むと期待している。8月9日公開予定の『IT ENDS WITH US』は、トレーラー公開から24時間での視聴回数が約1億3000万回を記録した。優れた原作の発掘と映画化という取り組みの成果として期待している」(松岡氏)とコメント。

 また、7月に有料会員数が1500万人を突破したクランチロールについては「アニメ市場の急速な拡大をとらえるため『Amazon Prime Channel』での配信地域を拡大。2023年10月の米国、英国に続き、2024年4月にブラジル、フランス、インドなどでも配信を開始している。6月にはソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが米国で映画館を運営する『アラモ・ドラフトハウス』の買収を完了。映画のみならずゲーム、音楽、アニメなどソニーが持つコンテンツIPとのシナジーやクランチロールとの連携を期待している。体験型ライブエンターテイメント事業への取り組みも強化する」(松岡氏)とした。

 エンタテインメント・テクノロジー&サービス分野 (ET&S分野)は、売上高が同5%増の6009億円、営業利益は同84億円増の641億円となった。中国で大幅な縮小となったテレビ市場については「在庫コントロールの徹底とコスト削減施策などでレジリエンスの高いオペレーションが実現できている。これを継続するとともに、家庭でのシネマ鑑賞体験を豊かにする新製品『ブラビア9』シリーズなど、高付加価値商品に注力していく。一方、大きく市場が伸びているデジタルカメラなどのイメージング事業は、中国での需要動向に細心の注意を払いつつ、新製品『VLOGCAM ZV-E10 II』の市場投入などにより、クリエーター層を多様化し、さらなる収益拡大を目指す」(ソニーグループ 執行役員 財務、IR担当の早川禎彦氏)と市場を分析する。

 I&SS分野では、為替の影響とモバイル向けイメージセンサーの増収により、売上高が同21%増の3535億円、営業利益は為替の好影響と増収効果により、前年同期から239億円と大幅増の366億円となった。「スマートフォン製品市場は、前四半期から継続してグローバルで緩やかながら着実な回復を示している。ハイエンドスマートフォン市場拡大もあり、出荷するセンサーの大判化はさらなる進展がみられる。第2四半期以降は超広角望遠カメラ用センサーの大判化がさらに進むと見込んでおり、このトレンドとカメラの動画性能向上に向けたセンサーの高性能化がモバイルセンサー市場の成長ドライバーになると見ている」(早川氏)とした。

 金融分野は、ソニー生命による市況変動の影響により、売上高が同34%減の4486億円、営業利益は、ソニー生命において債券売却益の計上があった前年同期から245億円マイナスの300億円と大幅な減収減益となった。

 ソニーフィナンシャルグループ 専務取締役 兼 CFOの山田和宏氏は「ソニー生命の保険商品の販売は、過去5年間で大きく成長しており、日本の人口が減少する中でもシェアを拡大することで保険商品の販売を継続的に伸ばしている。一方で、金利を中心とした市況変動要因によって、業績や財務の健全性に対して影響を受けやすい構造になっていることは課題と捉えている。財務面の課題に対する取り組みについては、第2四半期の業績説明会においてお示しする」と今後について話した。

 十時氏は「現状の市場の不安定さは、この先の業績を読みづらくするところがある。まさに真価が問われる局面に入ってくると認識している。私たちの事業ポートフォリオとしては今、エンターテインメントが最大のものになっているが、こちらは比較的マクロエコノミックの影響を直接受けにくいところがある。それにしてもいろいろなリスクを勘案しながら丁寧に事業運営をしていく考えに変わりはない。第1四半期の実績はまずもって順調と申し上げられるかなと思っている。経営数値目標と株主還元強化の方針については、引き続き堅持できるよう最大限の努力を続け、その進捗を継続してアップデートして行きたい」と総括した。