クアルトリクスCEOが語った「新たなデータビジネス」とは

AI要約

米QualtricsのCEOが「XMデータを生かした新たなビジネス展開を計画中」と明言。

同社はXMソリューションを提供し、AIを活用して顧客のインサイトを得る意向。

具体的なサービス名「Qualtrics Edge」も触れられ、今後の展開に注目。

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、Qualtrics CEOのZig Serafin氏と、Celonis日本法人 代表取締役社長の村瀬将思氏の「明言」を紹介する。

「これまで蓄積してきた“XM”データを生かしたサービスを提供していきたい」(Qualtrics CEOのZig Serafin氏)

 米Qualtricsの日本法人クアルトリクスは先頃、米国本社から最高経営責任者(CEO)のZig Serafin(ジグ・セラフィン)氏が来日したのを機に事業戦略について記者説明会を開いた。冒頭の発言はその会見の質疑応答で、同社が展開する「エクスペリエンス管理(XM)」ソリューションを通じてこれまで蓄積してきたデータを生かした新たなビジネスを始める考えはあるかと聞いた筆者の質問に答えたものである。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)時代のキーワードの1つである「エクスペリエンス(X)」と「マネジメント(M)」を組み合わせた「XM」は、Qualtricsが提唱した新しいソリューション分野だ。その目的は、顧客、従業員、ユーザー、パートナー、サプライヤー、投資家など、あらゆる関係者に対して、企業や組織が提供するエクスペリエンスを向上させることにある。エクスペリエンスは「感動体験」というのが筆者の解釈だが、日本語にしづらい言葉なのでここではそのままカタカナで表記する。

 Qualtricsは2002年に米国ユタ州プロボで創業。大学向けに開発・販売した市場調査を行うためのアンケート収集・分析ソフトウェアが、現在のソリューションに発展した格好だ。Serafin氏によると、同社の最新状況は図1に示した通りだ。2027年までにグローバルで5億ドル(約780億円)をAIの研究開発に投資する計画や、世界100カ国以上のあらゆる業界で約2万社の導入実績があることなどが目を引く。

 また、2018年に始めた日本での活動においても、XMの認知度向上をはじめ、サポート体制やパートナーエコシステムの強化を図ってきた。Serafin氏は日本におけるハイライトについて図2を示し、さらに今後5年間で日本に1億ドル(約156億円)以上を投資することを明らかにした。

 QualtricsのXMソリューションはこれまで個々の企業を対象としてきたが、今回Serafin氏の話を聞きながら筆者の頭に浮かんできたのは、顧客である2万社によって蓄積されたXMデータを活用することができれば、同社として新たなデータビジネスを展開できるのではないかということだ。この点について会見の質疑応答で聞いてみたところ、同氏は次のように答えた。

 「これまで蓄積してきたXMデータを生かしたサービスを提供していく予定だ。AIを活用することでさまざまなインサイトを得られるようにするつもりだ。既に一部の領域ではそうした仕組みを構築しており、お客さまのベンチマークなどに役立てていただいている。さらに、XMデータとAIを活用してXMに関するさまざまな傾向を捉えたり、経営の意思決定を支援するサービスを提供していきたいと考えている」

 Serafin氏は「Qualtrics Edge」というサービス名を口にした。5月に米国で開催された同社の年次イベントでも「開発中」として名前が挙がったサービスだが、具体的な内容はまだベールに包まれているようだ。「XMデータ×AI」をどう生かすか。注目していきたい。