人手不足を救う人型ロボット、米テック大手が挑戦

AI要約

米国の西海岸ではAI搭載ロボットの開発が活発に行われ、テスラやアマゾンが人型ロボットの開発に数十億ドルを投資している。

テスラの「Optimus」とアマゾンの「Digit」など、製造業向けの人型ロボットが将来世界的人手不足の解消に貢献する期待が高まっている。

人型ロボット市場は今後20年で380億ドル規模へ拡大し、製造業や他のセクターでの活躍が期待されている。

 米国の西海岸ではAI(人工知能)搭載ロボットの開発が活発に行われている。米テスラや米アマゾン・ドット・コムなどの企業は、人型ロボットの開発に数十億ドル(数千億円)を投資している。これらが将来、世界的人手不足の解消につながると期待されている。

■ テスラの「Optimus」、アマゾンの「Digit」

 テスラは製造業向け人型ロボットの開発に力を注ぐ企業の1社である。同社は2021年、「Optimus(オプティマス)」を発表した。イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は先ごろの決算説明会で、Optimusが将来、テスラの市場価値を25兆ドル(約4000兆円)に押し上げ、「当社の長期的価値の大部分を占めるようになる」と考えを示した。同氏によれば、Optimusは早ければ25年にも出荷が始まるという。

 アマゾンもロボットに積極投資している。同社は23年10月、出資する米新興企業、アジリティ・ロボティクスが開発した人型ロボット「Digit(ディジット)」の運用テストを開始した。二足歩行ロボットであるDigitは、物流施設内を移動し、二本の腕で物品を持ち上げ、別の場所に移す。現在、空のコンテナを回収する作業を行っており、従業員の反復作業の軽減につながるかどうかを確認している(米アマゾン・ドット・コムの発表資料)。

■ 人型ロボット市場、6兆円規模へ

 米CNBCによれば、これらのロボットは現時点で主に倉庫での作業に使用されている。だが、可能性は物流センターよりもはるかに広いと専門家はみている。将来的には、家庭やオフィスで人々と共に働き、様々なタスクをこなせるようになるとしている。

 米金融大手ゴールドマン・サックスの分析によると、人型ロボット市場は今後20年で380億ドル(約6兆円)規模へと拡大する見通し。スマートフォンや電気自動車(EV)のような必須デバイスになるという。

 こうしたロボットは何年も前から実現されている。しかし、ここ最近のAI技術の飛躍的な進歩により、業界に新たな期待感が生まれた。米カリフォルニア大学サンディエゴ校のコンピュータ科学・工学教授であるヘンリク・クリステンセン氏は「ロボット工学は、AIと現実が融合する場所だ。5年前には想像もできなかったような、興味深い新しいコンビネーションが生まれている」とコメントした。

■ 人手不足解消か

 世界的な労働力不足も人型ロボットへの関心が高まるもう1つの要因だ。求人件数は米国だけでも850万件に上る。特に製造業では人手不足が深刻だという。

 ゴールドマン・サックスは、製造業における求人件数が現在の50万件から、30年までに200万件に増えると予測している。今後ロボットがこれらの仕事を担うようになると提唱者らは期待している。

■ アナリスト「大量採用にはあと10年かかる」

 ロボット開発競争は世界規模で行われており、特に中国の動向が注目されている。米国の市場調査会社スタイルインテリジェンスのアナリスト、トム・アンダーソン氏は、「中国市場は世界最大だ」とし、「現在中国が製造しているロボットと同様のものを持つ西側諸国の企業はアマゾンだけだ」と付け加えた。

 それでも人型ロボットにはまだ課題がある。ロボットは高価で、工場内で自由に行動させることに対する安全面の懸念がある。同氏によれば、(人手不足解消につながるような)大量“採用”、あるいはそれに近い状態になるまでには、まだかなり待たなければならない。「おそらく10年はかかる」(同)という。