ドコモ前田社長に聞く、「井上尚弥世界防衛戦」配信とスポーツ・エンタメ領域への取り組み

AI要約

NTTドコモがLeminoでボクシングのダブル世界タイトルマッチをライブ配信することを発表。

前田義晃代表取締役社長兼CEOがスポーツ・エンタメ領域への意気込みを語る。

スポーツ配信を重視し、コンテンツのオリジナリティと定着の両面に取り組んでいる。

ドコモ前田社長に聞く、「井上尚弥世界防衛戦」配信とスポーツ・エンタメ領域への取り組み

 16日、NTTドコモは「NTTドコモ Presents Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ 井上尚弥 vs TJ ドヘニー & 武居由樹 vs 比嘉大吾」を、動画配信サービス「Lemino」でライブ配信すると発表した。他社配信サービスにはない、独占での配信で、無料で視聴できる。

 同日の会見後、前田義晃代表取締役社長兼CEOが報道関係者の囲み取材に応じ、スポーツ・エンタメ領域への意気込みなどを語った。

――Leminoにとって、今回の配信はどういったアドバンテージをもたらすか。

前田氏

 ボクシングは、たとえば五輪でも上位に挙げられる世界的に人気のあるスポーツです。やっぱり日本のチャンピオンが出てくると、常に盛り上がるスポーツでもあります。

 なかでも、井上選手は、ちょっと際立った存在。会見での挨拶で「日本の宝」と申し上げましたが、世界にとっても価値ある存在。そういう選手の試合を皆さまにお届けできる機会自体がそうあるわけではないです。

 それを担うことで、ようは、Leminoを通じて、たくさんのお客さんとコミュニケーションできるわけです。

――スポーツの配信を中心にしていくのか? ほかのコンテンツとのバランスは?

前田氏

 さまざまな配信サービスで、オリジナルコンテンツの強化が進んでいます。そうした作品・コンテンツがたくさん登場すると、「なぜそのサービスを使うのか」という理由になるんだと思っています。

 そのなかでも、スポーツのライブ配信は、もうその日、その時しかやっていないものです。かなりオリジナリティが高い。

 ドコモとしてはサッカーでも配信を手掛けていますが、スポーツは大きく強化したいと考えています。それ以外でも、新しいアーティストが登場すればライブを展開することもあるでしょう。

 映像配信という面では、吉本興業ともタッグを組んで進めていますし、Leminoは韓流コンテンツにも強みがあって先行配信してます。それぞれのファン層をしっかり獲得したいですね。

――井上尚弥選手の試合は他社サービスでも、過去、配信があった。配信権にかかる費用が高騰することもあるだろうが、どう考えているのか。

前田氏

 井上選手、武居選手といった世界チャンピオンの試合の価値が上昇することは決して悪い話ではないですよね。コンテンツとしての価値が上がると価格も上がるという考え方があるでしょう。

 そこに関わらせてもらえるということは、そのコンテンツの価値をいかに、ビジネスとして大きく展開できるか……しっかりやり切ることが大事なんでしょう。

 一方で、(配信権の料金が)上がりすぎて負担できる企業が限られるというように、競争する上で、難しい局面もあるでしょう。ただ、基本的にコンテンツの価値が高まっているから、ということで、決して悪いことではないと思っています。

――話題になる試合の配信は、多くの人に観てもらえるだろうが、一方で、どう定着させるかも課題になると思う。どう考えているのか。

前田氏

 たしかに、試合はかなり多くのお客さまにご覧いただいても、その後、定着しない方がいることは事実です。SNSでも「ありがとうLemino、さようならLemino」なんて投稿されることもありますので(笑)。

 でも、時間をかけて、繰り返して価値を提供して、期待にお応えしていくことで、(Leminoユーザーとして)定着してくださる方もいると思います。それはそれで期待したいです。

 実際にやっていることとしては、Leminoでご覧になった方と、同じようなプロフィールの方から、「ほかにどういう映像コンテンツを観ているのか」といったデータがわかります。それを分析して、コミュニケーションやオファーをしながら、一気に増えるお客さまをどう定着してもらうか、という取り組みを日々続けています。

――チケットがdカード GOLD会員向けに先行で抽選販売される。

前田氏

 はい、今回は、どのチケット販売よりも、もっとも速く先行抽選販売することになりました。

 経済圏を大きくすることを考えると、エンターテイメントというジャンルはとても重要です。それは、ファン全体とコミュニケーションできて、さまざまなサービスを使っていただける機会を増やしていけるからです。

――ただ、dカード GOLD会員はとても多い(2023年度末で1065万会員)。

前田氏

 そうですね(笑)。

 それこそ(一部報道で語ったdカードで発行する意向の)プラチナの話も差し上げていますが、そういうところでどう展開するかも考えていきたいです。

 今回、dカードの方のみというわけにはいきませんから、抽選も含めてコントロールする、ただ(先行購入できる)機会はあるという話です。

――ボクシングの中継は興行としての成功を目指す面と、技術面で新たな映像表現や会場でのミリ波の活用といった取り組みもあり得ると思うが、視野に入っているのか。

前田氏

 入っています。さまざまなスタジアム、アリーナで、一緒に取り組むものは、まさにそうした点が大きな目的のひとつです。

 今回の9月3日の試合で、どこまでオリジナルな取り組みができるかわかりませんが、まさに今、企画中で、活用できるところをぜひ考えたいです。

――スポーツとの連携は、どの程度重要なものなのか。

前田氏

 スポーツは大きな価値のあるもののひとつです。そして、オリジナリティのあるものを手掛けたいと考えているのも事実です。

 普段使いしていただいているお客さまがたくさんいて、満足してもらえるラインアップを揃えなければいけない。

 どこでも観られるものを、量だけ揃えれば使っていただけるほど、今の競争環境は優しいものではありません。そういう意味で、オリジナルなコンテンツをしっかり作って、ファンとコミュニケーションしていきたいです。

 たとえば、吉本興業と一緒にやっているNTTドコモ・スタジオ&ライブ(ドコモが66.64%、吉本傘下のFANYが33.36%出資)で手掛けた作品は、Leminoだけに卸しているわけではなく、Amazonプライム向けに「ドキュメンタル」などを制作しています。

 そうしたコンテンツ勝負のなかで、日本初の作品の形式が、海外へライセンスで提供されるケースもあります。実際に、今春、「FREEZE」という作品のフォーマットライセンス契約を結び、ポルトガルで提供するという話もありました。日本だけではなく、世界に対してどうやってライセンスするかという話が現実にできる。

 いろんな局面で、さまざまなパートナーと一緒に手を携えることを目指したいです。

――スポーツ配信でも、Lemino以外でライセンス提供することはあり得るのか。

前田氏

 あり得ると思います。スタジアムやアリーナなどと新しいコンテンツを作りながら、別のサービスでの配信が良いとなれば、それはそれで……ということはあり得るでしょう。もちろん、できるだけ「Lemino」で、とは思いますが(笑)。

――コンテンツ制作・開発にかける資金も、前田新社長の体制になって規模感が変わることはありますか。

前田氏

 もともと(2024年6月の社長職就任前から)私は見ていますから(笑)。もちろん戦略的に重要な部分と思っています。