「IT得意でないからハードも賢くする」 デジタル基盤「セレンディ」始動 狙うは1兆円規模 三菱電機

AI要約

三菱電機が、新たに立ち上げたデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」事業を本格始動し、社内データやノウハウを活用したサービス提供やパートナーとの連携に注力している。

セレンディは2030年までに1.1兆円の事業規模を目指すプロジェクトであり、データ分析や事業横断的なサービス開発を行い、各領域での活用を図っている。

三菱のセレンディは他社との差別化を図るために、ハードウェアへのフィードバックも行いながら、課題解決型サービスを展開していく方針である。

「IT得意でないからハードも賢くする」 デジタル基盤「セレンディ」始動 狙うは1兆円規模 三菱電機

 三菱電機が、新たに立ち上げたデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」事業を本格始動した。セレンディはデータ分析や事業横断サービスを提供できるWeb接続用(API)基盤などで構成している独自基盤で、社内で蓄積したデータやノウハウだけでなく、パートナーと連携した新たなサービスの実現にも取り組んでいる。11日にはセレンディを活用した鉄道向けサービスを公開した。

 三菱は、2030年には23年比約2倍の1.1兆円の事業規模にセレンディを育てようとしている。これまでは電力やビル、家電住設、鉄道、FA(ファクトリーオートメーション)の各領域でデータ分析や管理を個別に行ってきたが、それらをセレンディで横断的に分析・管理できるようにし、新たなサービスを提供していく狙いがある。

 11日に横浜で開いた事業説明会で、武田聡常務執行役は「セレンディで事業横断のデータ分析をして新たなソリューションを提供するとともに、それぞれの機器自体も進化させていく」と述べた。

 セレンディは技術基盤を提供するだけでなく、横浜に4月開設したDX(デジタルトランスフォーメーション)イノベーションセンター内で、パートナーとの共創にも生かす。DX人材も強化し、23年度の6500人から30年度には2万人に拡充する。

 セレンディを実現するために、「データ分析」「WebAPI」「サブスクリプション管理」「顧客情報」の4つの基盤を整備する。データ分析にはデータイク、ドットデータ、タブローソフトウエア、パワーBI(マイクロソフト)などを活用。データプールにはスノーフレークを使う。WebAPIはセールスフォースのミュールソフトを使う。

 事業横断型のソリューション開発も本格化した。同日提供を開始した鉄道向けデータ分析サービスは、エネルギーの最適利用や鉄道資産の最適配置、運用を実現するもの。FAでは製造現場の実態に合わせて製造や品質ロスの削減に向けた仕組みを開発中だ。将来的にはサプライチェーン全体での高度化を支援していく。

国内で広がる事業横断のデジタル基盤

 電機各社は、製造業で培ってきた現場とデジタル技術を組み合わせたサービス基盤の構築を掲げ、ブランド展開を加速している。日立製作所は、デジタル基盤「Lumada(ルマーダ)」を、富士通は「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」を打ち出す。今年は三菱に加え、NECもDX事業ブランド「BluStellar(ブルーステラ)」を立ち上げた。

 各社が進めるのは企業が抱えている事業課題などをデジタル化で解決する「課題解決型」サービス。培ってきた知見をサービス化して提供するとともに、顧客とともに一緒に解決していこうとするものだ。

 三菱のセレンディは、現場から得た知見を事業横断的に組み合わせて課題解決を支援するものだが、機器にもフィードバックしハード自体を進化させようとすることで、他社との差別化を図りたい考えだ。武田常務執行役は「(三菱は)ITが得意な会社ではない。ハードにフィードバックし賢くすることが他社にないところ」と強調。「事業の殻を破る目的もあり、共通基盤のセレンディを立ち上げた」と述べた。セレンディ関連の製品・サービスが今後、どのように展開されるか注目される。