AI時代の仕事--消えゆく職務と新たに生まれる役割

AI要約

AI時代には新しいタイプの職種が誕生しており、AI関連の職業にはAIスペシャリストやAI+Xの職種などが存在する。

ビジネスリーダーの多くがAI時代に新しい職種が生まれると考えており、AI監査人やAI倫理学者などの重要性が高まっている。

将来的にはAIトレーナーやAI監査人、AI倫理学者など、AIアプリケーションの管理に関わる役割が注目される可能性がある。

AI時代の仕事--消えゆく職務と新たに生まれる役割

 先頃、「AIコンピテンシーリーダー」の求人広告を見かけた。この役割には次のようなことが求められるという。「部門横断的なチームと緊密に連携し、生成人工知能(AI)技術をさまざまな分野で活用する戦略の開発と実施にあたる」

 このような求人広告(1年前でさえ聞いたことがなかった職種)が、AI時代には当たり前のものになりそうだ。ビジネスに携わるすべての人がAIを最大限に活用したいと考えているが、新興技術を最大限に活用するには、開発やデータサイエンスのスキル以上のものが必要になる。AIの取り組みには、アルゴリズムの訓練から倫理の監視まで、絶対に欠かせない職務が多数ある。

 業界関係者によると、新しいタイプの職種がビジネスの世界で誕生しているという。

 約10人に7人のビジネスリーダーが、生成AIの台頭に伴ってAI監査人やAI倫理学者、プロンプトエンジニアなどの新しい役割が生まれると考えていることが、Capgeminiのレポートで明らかになった。「AI管理とデジタルトランスフォーメーションの分野で、ガバナンス、戦略、ステークホルダーエンゲージメント、AI統合関連のポリシーに重点を置いた役割が生まれている」。Capgemini傘下のSogetiでバイスプレジデント兼米国生成AIリーダーを務めるDoug Ross氏は、米ZDNETにこう語った。「倫理的かつ説明可能で、偏見がなく、安定していて、法律に準拠したソリューションの構築を含めて、信頼できるAIをいかにして導入するかを理解することが重要になるだろう。その背景として、重要なビジネスプロセスへのLLMと生成技術の統合が進んでいることが挙げられる」

 AI関連の職種には2つのレベルがあることが明らかになりつつある、とペンシルベニア大学工学応用科学大学院の学部教育担当副学部長のRobert Ghrist氏は語る。「1つは、AIスペシャリストと呼ばれるような職種だ。このような人材は機械学習やニューラルネット、大規模言語モデルなど、AIの幅広い分野で訓練を積んでいる」とGhrist氏は説明する。

 AI関連職の2つ目のカテゴリーは、ビジネスや経営の幅広い役割との結びつきが強い。「これは非常に興味深い職種で、『AI+X』という形をとる。Xの部分に入る言葉は、法律、医学、教育などだ」とGhrist氏は続ける。「このような役割が増えていくが、適人者を見つけるのは骨が折れるだろう。核となる専門知識に加えて、AI導入スキルも求められるからだ」

 プロンプトエンジニアリングも、AI時代の注目の新しい職種とみられている。しかし、目指すべき職種としての長期的な未来ははっきりしない、とHyperscienceの最高技術責任者(CTO)のTony Lee氏は語る。「価値のある独特のスキル、専門知識だとは思う。しかし、フルタイムの仕事だろうか。その判断は、人材を採用する企業に委ねたい」

 プロンプトエンジニアリングのスキルは、現在は需要があるが、将来は事情が変わっているかもしれない、とLee氏は述べた。「これはコンピューターとやりとりする新しい方法であり、従来とは異なるスキルが求められる。だが、インターフェースがより会話的になり、人間らしさを増しているため、プロンプトエンジニアリングが新しいキャリアパスなのか、それとも一時的な機会でしかないのかは、まだ分からない」

 未来(たとえばインターネット時間で1年または2年先)について深く考えてみると、AIアプリケーションの採用と管理に重点を置いた新しい役割が注目を集めるかもしれない。これらの役割には、「AIトレーナー、AI監査人、AI倫理学者」などの職種が含まれる、とQlikのAI責任者であるNick Magnuson氏は述べた。