オオサンショウウオ固有種保護へ、外来種や交雑個体を「見た目」で判別…「特定外来生物」指定

AI要約

オオサンショウウオの交雑個体問題に関する取り組みと課題

交雑個体の増加による固有種の保護への影響

外来種・交雑個体の特定外来生物指定の意義

 日本固有種で国の特別天然記念物のオオサンショウウオを保護するため、政府は7月1日、固有種以外の外来種と交雑個体を「特定外来生物」に指定する。無許可での飼育や移動を禁じ、固有種との交配を防ぐのが狙いだ。指定は長年の懸案だったが、時間がかかった原因はその「見た目」にあった。(中部支社 小池拓海)

 オオサンショウウオの生息地として知られる三重県名張市。廃校になった小学校を活用した市郷土資料館のプールでは、約150匹のオオサンショウウオが飼育されている。全てが日本の固有種と外来種が自然交配した交雑個体だ。

 市内の河川で交雑個体が初確認されたのは2010年。固有種と交配しないよう、市は13年、交雑個体を捕獲して隔離する取り組みを始めた。市内では年間約50匹の交雑個体が捕獲され、資料館で一時飼育後、各地の研究機関に送られる。

 外来種・交雑個体の外見は固有種と似ており、判別が難しいため、1匹ずつ皮膚の一部を採取し、1~2週間かけてDNA鑑定を行う。地道な調査の結果、市内の河川で確認されたオオサンショウウオのうち、交雑個体が占める割合が地点によっては、13年の78%から22年の87%へと増加傾向にあることがわかった。

 資料館の飼育担当、門田了三さん(70)は「このままでは、日本の固有種が消えて交雑個体ばかりになってしまう」と危機感をあらわにする。

 環境省によると、固有種は岐阜県以西に生息している。外来種・交雑個体はこれまで東京、大阪、愛知、広島など1都2府8県で確認されたことがある。1970年代以降、中国原産のチュウゴクオオサンショウウオが食用として多数輸入され、その一部が逃げ出したり、放たれたりして固有種との交配が進んだとみられている。

 攻撃性が高く、固有種と交配するだけでなく、繁殖場所を奪う。こうした生態を京都大の研究チームが2010年に論文で発表して以降、固有種保護のため、外来種・交雑個体を特定外来生物に指定するよう求める声が広がった。