“勝ち組”日立は生成AIを「本当に」活用できるか? 社長のIR向け発言から考察

AI要約

生成AIがもたらすインパクトについて日立社長兼CEOの小島啓二氏が強調し、その事業機会について説明した。

生成AIの短期的なインパクトと事業機会について述べ、ソフトウェア生産性向上やデータセンター需要拡大への対応などを挙げた。

中長期的なインパクトと事業機会についても述べ、電力不足やフロントラインワーカーの生産性向上などの課題への対応を示した。

“勝ち組”日立は生成AIを「本当に」活用できるか? 社長のIR向け発言から考察

 「生成AIがこれから世の中にもたらすインパクトは極めて大きなものになる」

 日立製作所(以下、日立) 社長兼CEOの小島啓二氏は、同社が2024年6月11日に開いた「Hitachi Investor Day 2024」のスピーチでこう強調した。その上で同氏はインパクトの中身やそれがもたらす事業機会について説明した。その内容が興味深かったので、今回はそのエッセンスを紹介して生成AIがもたらす事業機会について考察する。

 「日立は『社会イノベーション事業のグローバルリーダー』を目指して、トランスフォーメーションジャーニー(変革の旅)をここ10年以上にわたって続けている。2021年度中期経営計画(21中計)までの構造改革の期間を経て、現在進行中の24中計でオーガニックな成長へと大きく舵を切った。そして財務指標の改善と企業価値の向上を図るために、コングロマリットから脱却してデジタルセントリックな企業を目指して成長スピードを加速させている」

 図1を示しながらこう説明した小島氏は、「そこに2023年来、極めて大きなインパクトを持つ技術が登場した。生成AIだ。これからは生成AIがもたらす事業機会を最大限獲得することが重要だ。今後も生成AIに匹敵するようなインパクトを持つ技術の革新が起きるだろう。そうした流れをしっかりと押さえながらアクレッシブに価値創造を追求する。日立はそんな企業であり続けたい」と力を込めた。

 図1は、同社の今回のIR(インベスター・リレーションズ)向け説明会のアピールポイントを集約したものだ。着目すべきは、真ん中に「生成AIがもたらす事業機会を獲得」と記されていることだ。

 生成AIがもたらすインパクトについては、「短期的にはソフトウェアやオフィスワーカーの生産性向上が期待される一方、データセンター需要の急拡大やAI用半導体供給不足といった課題が顕在化する。中長期的にはフロントラインワーカーの生産性向上や多言語間コミュニケーションの効率化が期待される一方、電力不足の深刻化やAIに伴う多様なリスクの発現といった課題が顕在化する」と説明した上で、「そうした課題を解決することも、日立にとっては極めて大きな事業機会になる」との見方を示した(図2)。

 生成AIの短期的および中長期的なインパクトがもたらす事業機会についてはどうか。

 短期的なインパクトがもたらす事業機会としては、ソフトウェア開発におけるエンジニア不足解消に向けた「ソフトウェア生産性向上効果の刈り取り」、生成AIの需要増大に伴う「データセンター需要急拡大への対応」、そして「AI用半導体の供給不足への対応」の3つを挙げた。図3の下段に記されているのは、それぞれの事業機会に向けて日立がグループとして保有している技術やサービスだ。

 中長期的なインパクトがもたらす事業機会としては、「深刻化する電力不足への対応」「フロントラインワーカーの生産性向上の実現」「AI利用に伴う多様なリスク発現への対応」の3つを挙げた(図4)。図4の下段には、それぞれの事業機会に向けた日立の技術やサービスが記載されている。