独自AIで営業力を強化!「バイトル」運営のディップが活用する3つのツール

AI要約

 日本の営業生産性が低い理由と、AIが営業現場にどのように変化をもたらしているかについて示唆。

 AIを活用した営業効率化の取り組みや、ディップが導入するAIについて詳細に紹介。

 ディップのAI「dipperくん」の特徴や成果について具体的に述べ、AIが営業力向上に貢献している様子を明らかに。

独自AIで営業力を強化!「バイトル」運営のディップが活用する3つのツール

 AIによってさまざまな業務の効率化・自動化が進む中、かつてはアナログな業務が占めていた営業現場でも、AIで効率化を図り、顧客への提案や関係構築に注力する動きが見られるようになった。AIで営業の仕事はどう変わっていくのか。そして、AIが浸透した世界に残る営業の価値とは――独自のAIで営業力強化を図る、人材サービス大手・ディップに聞いた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

● 日本の営業生産性はグローバル水準を下回る ~AIは救世主となるか

 日本で営業・販売に携わる人は856万人。労働人口の12%に当たる。しかし、マッキンゼーが2021年に公開した報告書「日本の営業生産性はなぜ低いのか」によれば、日本の多くの業種において、営業一人当たりの売上高は、グローバル水準を下回っているという。

 朝から晩まで身を粉にして働いているのに、なぜ生産性が低いのか。主な原因は、営業担当者が、顧客対応以外に忙殺されている点にあるようだ。日本の典型的な法人営業は、勤務時間の75~90%を商談準備や社内会議、事務作業などに費やし、顧客への営業活動は10~25%に留まるという。一方、グローバルのベストプラクティスは、顧客への営業活動が50~55%と、時間の使い方が真逆だ。

 コロナ禍で、一部の商談や会議が半ば強制的にオンラインに移行した。さらに生成AIの登場で、文章や資料作成をサポートしてもらおうという試みも増えている。生産性向上という点では良い傾向にある半面、ITを有効活用できるか否かが、営業個人の成績、ひいては企業競争力をも左右する場面が見られるようになった。

● ディップはなぜ、 営業現場にAIを積極投入するのか

 「バイトル」「はたらこねっと」などの求人サイトを運営するディップでは、独自開発したAIを活用し、営業の業務効率化と競争力向上を図っている。同社で西東京エリアの営業組織の課長を担う徳澄悠哉さんは、「AIを投入することで、若手が短い時間で試せることを増やし、自信を持って顧客と向き合えるようになってほしい」と語る。

 10代の頃からLINEやSNSが中心で、電話でのコミュニケーションに慣れていない世代が営業の主力となりつつある今、慣れないテレアポで心がポキッと折れてしまうのを防ぎたい。多くの企業が直面する時代の流れだが、こうした課題に、ディップはAIも活用しながら対応している。

 (1)顧客の代わりにロールプレイングの相手にもなってくれるAI「dipper(ディッパー)くん」

 同社がChatGPTをベースに開発したキャラクター「dipperくん」は、若手の育成をサポートしてくれるAIだ。顧客のペルソナなどを入力すると、適したトークスクリプトを生成。電話や商談の場での顧客とのやり取りを、ロールプレイングの要領でシミュレーションできる。

 加えて、やり取りした内容を文字起こしし、「言葉づかいはていねいだが、顧客が乗り気でないのに強引にアポを取る姿勢は改善が必要」「顧客の悩みを理解しようとする質問が不足していた」など、具体的なフィードバックやスコアリングもしてくれる。これらを営業の先輩が見て、より具体的なアドバイスをしているのだが、こうした取り組みが功を奏し、アポイントの獲得率は2倍になったそうだ。

 商談中も、dipperくんは営業担当者のブレインになってくれる。顧客が本当に求めている人材は、顧客本人すら気付いていないことがある。そんなとき、dipperくんに話しかけると、「本当はこういう人材もターゲットなのでは?」などと気付きを与えてくれるという。