続く日テレ『with MUSIC』の試行錯誤、「若手男女グループ」+”何か”でオリジナリティ出すのが最適解? 有働由美子&松下洸平のMCを生かすキャスティングもカギ

AI要約

日本テレビが春にスタートした音楽番組『with MUSIC』は、他の音楽番組と比較してまだ試行錯誤が続いている。

番組のコンセプトやゲスト、放送形態などについて、視聴率獲得と視聴者層の獲得を追求している様子がうかがえる。

『with MUSIC』は他の音楽番組と違うオリジナリティを出そうとしているが、まだ定着していない部分もあり、成長過程にある。

続く日テレ『with MUSIC』の試行錯誤、「若手男女グループ」+”何か”でオリジナリティ出すのが最適解? 有働由美子&松下洸平のMCを生かすキャスティングもカギ

 昨今、テレビ各局が力を入れているのが音楽番組だ。それぞれの番組が独自性を打ち出そうとしているが、この春スタートした日本テレビの『with MUSIC』は試行錯誤を続けている。その最適解とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 日本テレビのゴールデンタイムで放送される音楽番組は34年ぶりであり、視聴者の多い土曜20時台であることも含め、大きな期待を背負って今春にスタートした『with MUSIC』。

 音楽番組は2010年代にゴールデンタイム絶滅の危機にさらされるなど苦境にあえいでいましたが、地道に放送を続けてきた『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に加えて、『CDTV ライブ!ライブ!』(TBS系)が若年層の人気を集めたことで息を吹き返しました。

 同じ今春には『ミュージックジェネレーション』(フジテレビ系)もスタートするなど、ひさびさに民放主要4局がゴールデンタイムでそろい踏みする中、『with MUSIC』は春からの約5か月間、「最も試行錯誤を続けている音楽番組」と言っていいでしょう。

 同番組のコンセプトは「MC・有働由美子とアーティストナビゲーター・松下洸平が豪華アーティストのルーツに触れるトークや最新ヒット曲などで掘り下げていく」。福山雅治さん、宇多田ヒカルさん、稲葉浩志さんなどの大物を招いたり、長めのトークパートを入れたり入れなかったり、生放送パートを入れてライブ感を高めたり、2時間特番でスケール感を出したり、さまざまなテーマの映像特集を組んだりなど、良くも悪くも「まだ番組の構成が固まっていない」という感があります。

 これらの試行錯誤にはどんな背景や狙いがあるのか。他の音楽番組と比べながら現状と今後を探っていきます。

 日本テレビは民放主要4局の中でも、最もスポンサー収入につながりやすいコア層(13~49歳)の個人視聴率は断トツであり、それを得るためのマーケティングが徹底されています。

 つまり、日本テレビはコア層の個人視聴率を獲得するために「自局はもちろん他局の番組も参考にして制作している」ということ。特にゴールデンタイムの音楽番組はひさびさだけに、前述した番組コンセプトを掲げながらも、数字が獲れなければ他局を参考にして柔軟に変えていくのでしょう。

 その点、宇多田ヒカルさんなどの大物ゲストや長めのトークパートは、他局にはない『with MUSIC』のオリジナルですが、現状あまり数字は獲れていないようです。「誰もが知っている大物アーティストを出したからといって数字が獲れるわけではない」のが音楽番組の難しいところでしょう。

 そこで参考になるのが、ライブ演出や生放送にこだわって若年層の支持を得ている『CDTV ライブ!ライブ!』。メインゲストのファンを集めた熱気あふれるライブ空間を作り上げたり、サブスクやMVとは異なるハイテンションのパフォーマンスを引き出したりなどの工夫で視聴者を引きつけています。

 ただ、そのコンセプトで放送を続けてスタッフの演出が洗練され、アーティストとの信頼関係が強固な『CDTV ライブ!ライブ!』と比べると、『with MUSIC』はまだまだ発展途上。SNSの書き込みを見ても「この番組でしか見聴きできないもの」というまでの印象には至っていないのかもしれません。

 また、これまで5回行った“2時間特番”という編成も、今春から放送時間を倍増させた同番組と同じですが、「『with MUSIC』はできれば土曜20時台の1時間番組として成功させたい」という思惑もあり、日本テレビとしては悩ましいところでしょう。