劇団俳優座×桐朋学園芸術短大が〝周年タッグ〟、劇団36年ぶりの「セチュアンの善人」公演、9月20日、俳優座劇場で開幕

AI要約

劇団俳優座は9月20日から28日まで舞台「セチュアンの善人」を上演する。

主人公シェン・テを現代の多様性を反映させ、性的マイノリティーの人物像に改変。

若手からベテランの劇団員と同短大の演劇学生が参加する異例のコラボ公演。

劇団俳優座×桐朋学園芸術短大が〝周年タッグ〟、劇団36年ぶりの「セチュアンの善人」公演、9月20日、俳優座劇場で開幕

 劇団俳優座は9月20日から28日まで舞台「セチュアンの善人」(ベルトルト・ブレヒト作、演出・田中壮大郎)を東京・六本木の俳優座劇場で上演する。劇団創立80周年と俳優座劇場創立70周年、劇団と縁のある桐朋学園芸術短期大学(東京都調布市)創立60周年を記念した公演は、若手からベテランの劇団員19人と同短大の演劇を学ぶ学生19人が参加する異例のコラボとなる。稽古に励む劇団の森山智寛(年齢非公表)、八柳豪(44)、学生の渡邉咲和さん(20)、上田雪矢さん(19)が本紙の取材に応じ、本番に向けた意気込みを語った。(三橋正明)

 

かつて市原悦子さん、栗原小巻が主人公を演じた「セチュアンの善人」を劇団俳優座として再演するのは36年ぶり。今回、主人公シェン・テを現代の多様性を反映させ、性的マイノリティーの人物像に改変。森山はシェン・テ役を担う。

 物語は、搾取が尽きない架空の町・セチュアンを舞台に男娼(だんしょう)のシェン・テが宿が見つからずに困り果てていた神さまに一晩の宿を提供。お礼にもらったお金で小さな店を開く。しかし、店には知人や親類が押しかけ、シェン・テは架空のいとこシュイ・タに変装し、シェン・テの数々のトラブルを解決するのだが…。人間の善と悪、欲望が交錯する歌もダンスも織り交ぜた全10幕の舞台だ。

 2役を演じる森山は「難しいです。男性を演じているが、心の中には女性の気持ちがあって本質的には1つの役のイメージかな。学生たちは皆さん、本当に個性があってすごく楽しい稽古場になっている」と語る。その上で「古い舞台ですが、今の人にも共感できる社会性を反映していると思う。主人公の言葉には刺さるものがあります。プロと学生、毎日演劇ばかり考えている38人が作る間違いなく面白い舞台になりそうです」と力を込めた。

 シェン・テと恋に落ちる何をやってもうまくいかないパイロット・スン役の八柳は「若い学生たちの前でかっこ悪いところを見せてリラックスしてもらい、気負わずに稽古をしてもらいたい」とエールを送る。さらに学生を前に「自分は高校、大学と芝居には無縁で、映画に出られると思って劇団に」と話しかけ、和ませた。

 「高校時代の演劇部が楽しくて、これからもずっと舞台に関わりたい」という渡邉さんは「神さま」の1人を上田さんとWキャストで演じる。「劇団俳優座の皆さんと組めて本当に楽しいし、どんどん吸収できる。幸せです」とニッコリ。これには森山から「本当に思ってる?」といじられるなど、和気あいあい。

 上田さんも「神さまと言っても結構無責任だったりする」と役柄に触れた一方、「プロってすごい。高校の学芸祭とかの経験はあるけど、俳優座劇場は初めて。入場料が肩にのしかかっています(笑)」と緊張を明かした。

 そう話した上田さんに舞台だけでなく、声優でも活動する森山は「実は僕も俳優座劇場の舞台に立つのは初めてなんです」と打ち明け、気遣いを見せた。

 脚色、上演台本も手がける劇団俳優座出身で同短大特任講師も務める田中さんは「学生には先輩の背中を見て、同じ現場で息を吸ってほしい。先輩も若い人の力をもらって演劇エネルギーの循環ができればいい。そして挑戦するのも今回の狙いの1つです」と明かした。

 今回のコラボ公演には次世代の演劇界の人材発掘にもつなげようという80周年から新たに踏みだす劇団の思い入れもある。東京・六本木のランドマークの1つでもある俳優座劇場は来年閉館する予定だけに歴史を刻む記念すべき公演になりそうだ。