「山が嫌いな山岳看護師」屈折した心情を丁寧に 宮沢エマ「マウンテンドクター」の挑戦

AI要約

「マウンテンドクター」は、山岳医療をテーマにしたフジテレビ系のドラマで、主人公と仲間たちの成長を描いている。

主人公の山岳看護師の鮎川玲は、過去のトラウマを抱えつつも、山岳医療に携わる仲間たちと触れ合いながら変化していく姿が描かれる。

作品の魅力は、救助活動の緊迫感やリアルな描写などであり、山岳医療に対する理解を深めるきっかけとなる。

「山が嫌いな山岳看護師」屈折した心情を丁寧に 宮沢エマ「マウンテンドクター」の挑戦

◇フジテレビ系「マウンテンドクター」月曜午後10時

山岳医療とは、山岳地で発生する病気やけがへの医療行為を指す。日本での認知度は高くない。「関係者が見ても違和感がないようにしたい」と演じる山岳看護師の鮎川玲に成り切るため、山岳医療に関する本を読み、日本では数少ない山岳看護師の交流サイト(SNS)をフォローするなど入念にリサーチをして収録に入った。山々に囲まれた長野県松本市を舞台に、山岳医療に携わることになった整形外科医の宮本歩(杉野遥亮)が、山岳医としてさまざまな思いを抱える仲間や患者たちと触れ合い、現実と向き合いながら成長していく姿を描く。

歩と同じ病院に勤務する玲は、常に冷静で真面目で優秀。かつては祖父が経営する山小屋の看板娘で、山を愛していたが、その気持ちにふたをしていた。実は、7年前、玲が同行した登山ツアーの最中に雪崩が発生。同行した山岳医が命を落とし、その責任を感じていたのだ。

「玲は『山が嫌い』と言いながら、山から離れられないという矛盾を抱えていた。トラウマ(心的外傷)を抱えた人間がどう生きてきたのか。リアルにあり得る設定だと思いました」と語る。常に前を向く歩と交流する中で玲に変化が生まれ、「もともと持っていた正義感が刺激されて表面化する。徐々に気持ちが解放される。玲の感情が変化するプロセスを丁寧に表現したいです」と明かす。

作品の魅力に、山岳地での救助活動の緊迫感と臨場感、圧倒的なリアリティーとスケール感を挙げる。

「一刻を争う事態になることが多く、スリリングな瞬間が見せ場。山岳医療はなじみがないから敬遠する方もいらっしゃるかもしれないけれど、食わず嫌いにならないで。山が多い日本で私たちは山とどう共生していくのか、という問いかけもしていると思います」

今年、ミュージカル「ラビット・ホール」「オデッサ」で菊田一夫演劇賞を受賞するなど、舞台で華々しい実績を残す傍ら、近年はテレビや映画といった映像作品にも精力的に出演している。だが、「芝居に満足したことがない。まだまだです」と自戒する。「最近、開ける芝居の引き出しが同じで、そんな自分がいやになります。人の芝居を見るしかない、いろんな役に出合うしかない、人生経験を重ねるしかないと思う。取り組みやすい役や芝居に逃げないで、もっと引き出しを増やしたいです」と力を込め、「芝居に満足したらおしまいじゃないかな。真摯に芝居と向き合って、その先にある自分の未来が楽しみです」と笑う。

いつまでも初心を忘れない挑戦者としてのオーラを放つ。

■みやざわ・えま 昭和63年、東京都出身。平成25年、俳優デビュー。NHK連続テレビ小説「おちょやん」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、「ゆりあ先生の赤い糸」(テレビ朝日系)、「Destiny」(同)などに出演。