実写化で再注目!650日間の受験ドラマ『ブルーピリオド』の「スポ根世界」が胸を打つ理由

AI要約

『ブルーピリオド』はスポ根要素を取り入れつつ、美大受験を描いた異色の漫画であり、主人公の成長と努力が描かれている。

物語はヤンキー高校生が美術への情熱を見出し、東京藝術大学への合格を目指す姿を描いており、リアリティの高い描写が魅力。

主人公が美大進学を目指す過程で挫折やライバルとの戦いを経験しつつ、成長していく姿が描かれている。

実写化で再注目!650日間の受験ドラマ『ブルーピリオド』の「スポ根世界」が胸を打つ理由

 努力と根性で挫折を乗り越え、天才型のライバルに打ち勝ち、頂点をつかみ取る――そんな主人公の姿が感動を呼ぶ「スポ根」もの。昭和世代が親しみやすいこの図式で、スポーツならぬ大学受験を描き、しかも努力以前に才能も重要な「美大」を目指す漫画が大きな話題となっています。

 “スポ根×美大受験”という、異色の取り合わせで注目を集めるのは、山口つばさ氏の漫画『ブルーピリオド』。コミックス既刊15巻で、累計発行部数700万部突破という人気作です。すでにアニメや舞台にもなり、8月9日からは眞栄田郷敦さん主演の実写映画も公開されました。

 本作は、飲酒も喫煙もする金髪のヤンキー高校生が、あるきっかけで絵に目覚め、東大より難しいとも言われる東京藝術大学を目指して、ゼロから奮闘するという物語。いかにも漫画的に聞こえるかもしれませんが、藝大出身の著者によるリアルな描写が説得力・大の作品です。

 2017年より『月刊アフタヌーン』(講談社)にて連載中で、これまでに『マンガ大賞2020』、『第44回講談社漫画賞 総合部門』を受賞したり、『第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門 審査委員会推薦作品』に選出されるなど、各方面から高く評価されています。

 また、コミックスの翻訳版は15ヵ国以上で発売され、2021年にはテレビアニメがNetflixで全世界に配信されるなど、ワールドワイドな人気ぶり。今回、眞栄田郷敦さん、高橋文哉さん、板垣李光人さん、薬師丸ひろ子さんらが出演する実写映画となったことで、さらにファン層が拡大しそうです。

 では、気になる物語をもう少し振り返りましょう。

 主人公の矢口八虎は、「DQNの癖にちょー頭いい」とクラスで人気の高校2年生。要領がよく、渋谷のスポーツバーでオールする友達づきあいと、学年上位の成績とを両立させ、“リア充”な日々を送っています。一方で、本気で取り組まずともうまくやれている現状に、虚しさを感じることも。

 そんなある日、偶然目にした美術部員の絵に心を奪われ、これまでまるで眼中になかった美術へと意識が向きます。そして、サボれそうという理由で選択した美術の授業で、オール明けの渋谷の風景を青い絵の具で表現し、遊び友達から共感を得たことで、絵を描く悦びに目覚めるのです。

 その衝動は激しく、美術部へ入部して、美大進学を考えるまでに。家の経済状況から私立を諦め、国立である東京藝術大学への挑戦を決意します。ところが、八虎の志す絵画科は、現役で合格するのは毎年5人ほどとも言われる狭き門。日本一受験倍率が高いとも言われる学科です。

 強烈な個性を放つ天才や、芸術一家に生まれたサラブレッドをライバルに、経験も才能もない八虎がいったいどう戦うのか……? 受験までの650日間、何度もの挫折を味わいながら根性で乗り越えていく、努力と成長の日々が描かれます。