かつては大スターでも断れなかった「年間契約」とは? ハリウッドを変えていく新時代俳優エマ・ストーン

AI要約

映画『哀れなるものたち』(2023)は、大胆かつショッキングな内容で注目を集める作品であり、主演のエマ・ストーンがプロデューサーとしても活躍していることが特筆される。

作品の舞台は、外科医によって死から蘇った女性の姿を通じて、現代女性の地位の変化を象徴的に描いている。

エマ・ストーンの活躍は、かつての映画業界で女性が抱えていた制約とは一線を画し、新たな時代の女優像を築いていることを示唆している。

かつては大スターでも断れなかった「年間契約」とは? ハリウッドを変えていく新時代俳優エマ・ストーン

字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。

あっと驚く大胆でショッキングな内容の『哀れなるものたち』(2023)は、とてもおもしろい映画でした。非常にお金のかかっている衣装もすごかったし、主演を務めただけでなく、プロデューサーとして作品の一端を担ったエマ・ストーンのチャレンジ精神はすごいと思います。

今でこそ製作に関わる俳優は多いけれど、かつてはゲイリー・クーパーほどの大スターだって映画会社と「年間◯本」という契約を結ばされて、いやでも黙って演じなきゃいけなかった時代があったんです。

まして女優は歳をとると演じる役が少なくなくなるし、男性主人公の横で刺身のつまのような役しかもらえなかった。自分で企画を立て、映画を作るなんてありえませんでした。

そういう意味でエマ・ストーンを始め、最近の女優たちの活躍は女性の地位の大きな変化を感じさせます。現代女性の進化に大きな拍手を送りたいし、彼女たちがこれからのハリウッドの新しい旗手になると期待しています。

語り/戸田奈津子

アートワーク/長場雄

文/松山梢

『哀れなるものたち』(2023) Poor Things 上映時間:2時間21分/イギリス

天才外科医のゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)の手により、胎児の脳を移植され奇跡的に死から蘇った女性ベラ(エマ・ストーン)。

身体は大人、知能は子供のベラは、バクスターに見守られながら日々多くのことを学んでいく。次第に自我に目覚めた彼女は外の世界に興味を持ち、弁護士のダンカン(マーク・ラファロ)と共に冒険の旅に出る……。

アラスター・グレイの小説をヨルゴス・ランティモス監督が映画化し、エマは製作も務めた。アカデミー賞では主演女優賞・美術賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門を受賞。

エマ・ストーン

1988年11月6日生まれ、アメリカ・アリゾナ州スコッツデール出身。ドラマへのゲスト出演などを経て『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(2007)で映画デビュー。『キューティ・バニー』(2008)『ゾンビランド』(2009)『小悪魔はなぜモテる?!』(2010)『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』(2011)『アメイジング・スパイダーマン』(2012・2014)シリーズ、『マジック・イン・ムーンライト』(2014)などに出演。

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)『女王陛下のお気に入り』(2018)でアカデミー助演女優賞にノミネート。『ラ・ラ・ランド』(2016)と『哀れなるものたち』(2023)で同主演女優賞を受賞した。

『クルエラ』(2021)『僕らの世界が交わるまで』(2022)『哀れなるものたち』などプロデューサーとしても活動している。