『【推しの子】』監督の「hajimari」フォルダは何を意味する? 原作派も考察が湧く演出に

AI要約

脚本家と原作者のやりとりが描かれたアニメ『【推しの子】』第15話。アクアの過去とPTSDの症状、監督の演出による謎のフォルダ、アイの死の衝撃的なフラッシュバックシーンに注目。

アイの死のフラッシュバックシーンは恐ろしさを生み出し、監督の演出による謎のフォルダが物語の起源を連想させる。作画のクオリティには動画工房の手腕が光っている。

『【推しの子】』は新たな話題を呼び、作画のクオリティや登場人物の心情描写が見どころ。ファンには未知の要素を提供するアニメ版として期待が高まる。

『【推しの子】』監督の「hajimari」フォルダは何を意味する? 原作派も考察が湧く演出に

 前回に引き続き、舞台『東京ブレイド』の制作をめぐり、脚本家のGOAと原作者の鮫島アビ子のやりとりが描かれたアニメ『【推しの子】』第15話。刀鬼が肩に刀を乗せて話すなど、原作の漫画ではみみず文字で表現されていたGOAとアビ子の脚本のブラッシュアップの流れも盛り込まれ、2人が意気投合していく様子がより詳細に描かれたアニメ映像となった。

 しかし第15話の放送後、SNSを賑わせたのは、意外な人物だった。それは、アクアの師匠的な存在であり、幼少期から彼を知る五反田監督である。

 感情演技をするために、自らの過去の記憶から感情を引き出そうとしたアクア。しかし、過去を振り返るほどに、記憶の中のアイの死に触れることになり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状に悩まされる。第15話では、そんなアクアの過去の出来事を、アイの死については伏せつつも、彼女であるあかねに監督が伝える。

 話題を呼んだシーンは、EDに入る数秒前、監督がデスクに向かい、PCをいじっている場面だ。デスクトップにはさまざまなフォルダが並べられているが、その中に「hajimari」「hikaru」「hoshino」「aqua」と4つのフォルダが並んでいるのである。もちろん、これらは原作漫画には存在しない。

 本作は、これまで原作に忠実な展開で評価されてきた。しかし、このさりげない演出は、アニメ制作陣の意図的な仕掛けとも受け取れる。時系列的には原作の最新話よりも過去の出来事を描いているはずのこの段階で、監督が「原作(のこの先の展開)に関わる要素」を既に把握していたことを示唆しているようにも見えるからだ。特に「hajimari」というフォルダ名は、「始まり」を連想させ、物語の起源や展開に関する重要な情報が含まれているのではないかと、ファンの想像を掻き立てている。

 もちろん、それぞれのフォルダの中身が明らかにならない限り、確実なことは言えない。しかし、このさりげない演出は、視聴者を楽しませようとする制作者の思いが詰まった、「アニメ版」ならではの小さくも大きな仕掛けなのかもしれない。

 『【推しの子】』第2期は、その卓越した作画と演出で既に高い評価を得ていたが、第15話で新たな話題を呼んだ。特に注目を集めたのは、アイの死のフラッシュバックシーンだ。

 このシーンは、その表現の巧みさゆえに「最恐」とも評される程の衝撃を視聴者に与えた。目から光が失われたアイの姿は、まるでホラー作品のワンシーンのような不気味さを醸し出している。その漆黒さと徐々に死に飲みこまれていくアイの精緻な描写が、観る者の心に深く刻まれる恐ろしさを生み出していた。

 この驚くべき作画のクオリティを支えているのが、制作会社・動画工房だ。『NEW GAME!』『先輩がうざい後輩の話』『干物妹!うまるちゃん』など、日常系アニメでの高い評価で知られる同社の特徴が、『【推しの子】』にも遺憾なく発揮されている。特に、舞台稽古の合間の黒川あかねと有馬かなのやりとりなど、一見些細な日常シーンにおける女子キャラの作画のかわいらしさは見事というほかない。

 春クールの『夜のクラゲは泳げない』の高評価に続き、現在は『【推しの子】』と『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』が続けて放送されている。「動画工房リレー」とも呼ばれるこの流れは、同社の安定した作画力と演出力を改めて世に知らしめる結果となっているに違いない。

 ようやく役者に脚本がわたり、メインキャラたちの演技パートが映像で観られる日も近いであろう『【推しの子】』。先を知っているファンにとっても考察の余地を残すアニメ版として、また新しい本作の一面を見せてくれる日が楽しみだ。