心臓の出口が閉まらない…「大動脈弁閉鎖不全症」の恐怖~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.26~

AI要約

『ブラックペアン シーズン2』は二宮和也主演の日曜劇場ドラマで、医学監修は山岸俊介氏が担当する。シーズン1で好評だった医学的解説コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」が継続される。

今回の解説では、大動脈弁閉鎖不全症について詳細に説明されている。この病気は大動脈弁が閉じなくなり、血液が左心室から戻ってきてしまう状態である。心臓の負担が増え、全身に必要な血液を送り届けられなくなるため、手術が必要とされる。

大動脈弁置換術や大動脈弁形成術などの手術が行われ、これらは外科医の基本的な手術の一つであり、難易度は高い。早めの手術が大切であり、心臓手術は全て中等度以上の難易度がある。

心臓の出口が閉まらない…「大動脈弁閉鎖不全症」の恐怖~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.26~

二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還する『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。シーズン2の放送を記念し、山岸氏の解説を改めてお伝えしていきたい。今回はシーズン1で放送された7話の医学的解説についてお届けする。

※登場人物の表記やストーリーの概略、医療背景についてはシーズン1当時のものです。

■大動脈弁閉鎖不全症

心臓の中には4つの部屋があって、血液を一方通行に流すためにそれぞれの部屋の間には弁(一方向にだけ開く扉)があります。

大動脈弁閉鎖不全症の大動脈弁は心臓の出口にある扉で血液は左心室から大動脈弁を通って大動脈→全身へと流れていきます。この大動脈弁が閉じなくなってしまった病気が大動脈弁閉鎖不全症です。文字通り閉鎖が不全(完全ではない)な病気です。

せっかく大動脈から全身に流れた血液が大動脈弁が閉じないと左心室に戻ってきてしまいます。左心室はせっかく全身に血液を送ったのに、血液がまた戻ってきた、また戻ってきたと非常に大変です。こんなに頑張って全身に血液を送っているのに、また戻ってきたよ、と負担がかかります(心負荷)。一旦送った血液が戻ってきてしまいますので、左心室はだんだん大きくなってきます(心拡大)。

心臓はある程度締まっていないと力を発揮できませんので、心臓が拡大して心筋が伸びてくると、パワーが出なくなってしまいます(伸びきったゴムのようになってしまいます)。全身が必要とする血液を送ることができなくなってしまうのです(心不全)。

大動脈弁閉鎖不全症はこのように心臓の筋肉が伸びきってしまわないうちに手術をしたほうがいいと言われています。手術は大動脈弁を人工弁に取り替える大動脈弁置換術と大動脈弁を修理する大動脈弁形成術があります。

大動脈弁閉鎖不全症の大動脈弁置換術は、基本的な手術で心臓外科のトレーニングを受け始めた外科医が最初に行う手術の一つです(心房中隔欠損症の手術も基本的な手術と言われています)。基本的な手術といっても、簡単ではありません。心臓手術に簡単な手術はありません。すべて難易度としては中等度以上になります。