升毅・戸塚祥太「アンドリューとマイロとの戦いに注目してほしい」『SLEUTH/スルース』ゲネプロ取材会レポート

AI要約

劇作家アンソニー・シェファーの名作『SLEUTH/スルース』が2023年に続き再演される。主演は升忠克と戸塚祥太。物語は邸宅で始まり、推理作家のアンドリューが妻の浮気相手のマイロに宝石泥棒を持ちかける展開に発展する。

演劇集団円の内藤裕子が演出を務め、升と戸塚が意気込みを語る。橋本良亮から戸塚へのキャスト変更によるメッセージも届き、初日に向けてプレッシャーと期待が高まる。

稽古中に飲酒を辞めた升は、「ゲーム感覚で楽しめる」と話し、戸塚も「アンドリューとのバトルに注目してほしい」と喝入れる。作品は1幕と2幕で全く異なる世界観を持つが、二人の男たちの心理戦が魅力とされる。

升毅・戸塚祥太「アンドリューとマイロとの戦いに注目してほしい」『SLEUTH/スルース』ゲネプロ取材会レポート

映画『ナイル殺人事件』『地中海殺人事件』などで知られるイギリスの劇作家、アンソニー・シェファー。彼が1970年に発表したのが舞台『SLEUTH/スルース』だ。トニー賞最優秀作品賞の受賞をはじめ、エドガー賞、ドラマ・デスク賞を受賞するなど、その年の演劇界を席巻した最高傑作ミステリーと言われている。

さらに、2007年にはマイケル・ケインとジュード・ロウ主演で映画化され、日本でも大きな話題を呼んだ。

日本では2023年に続き、今年も上演が実現。演劇集団円の内藤裕子が演出を、主演は升毅、戸塚祥太を務める。

初日開演に先駆けて行われた取材会、ゲネプロの模様をレポートする。

物語はある邸宅で始まる。

アンドリュー・ワイク(升毅)は著名な推理小家。あるとき、彼は妻の浮気相手であるマイロ・ティンドル(戸塚祥太)を邸宅へと呼び出す。

不倫への追求を受けるものだと思っていたマイロだったが、アンドリューは意外なことを言い出す。

「妻の浪費家ぶりに困っている」

「自分にも愛人がいる」

戸惑うマイロに、アンドリューが提案したのは、「自宅にある金庫から高価な宝石を盗み出してほしい」。

宝石には盗難保険がかかっているので、マイロは宝石と妻を手に入れ、自分は保険金を手に入れ、愛人と過ごすことができる。これは双方に利益があることだと言われたマイロはアンドリューの提案を受け入れることにするが……。

ゲネプロ前に行われた取材会。

まず初日に向けての意気込みを問われると升は、「これまで積み重ねてきたものを信じながら、とっつー(戸塚)の足を引っ張りながら……」と笑って言ったあと、「ふたりで力を合わせていい初日にしたいと思います」と語った。一方、戸塚は「なにせステージ上にふたりしかいないということなので、先輩の胸を借りるつもりで。升さんに飛び込んでいこうかな、と思います」と決意を語った。

今回の舞台は、上演発表後に橋本良亮の活動休止に伴い戸塚へとキャストが変更になった。上演初日となるこの日の朝に橋本からメールが届いたそうで、「初日おめでとうございます、というメールを朝いただきました。(橋本も)大変な状況だけど、連絡をくれたので、がんばります、ありがとう、と返事をしました」。

前日になってプレッシャーを感じたそうだが、橋本からのメールを受け取ったことで、ほぐれたという。

「彼も、自分の現状と戦っていますから。僕もここでしっかりと戦って、升さんに飛び込んでいきたいな、と思い直しました」。

急きょ登板となった戸塚の魅力について「男気がある」と升。

「単純に、はっしーのために自分が、と背負ってくれているところが素敵だな、と。初めてはっしーからとっつーに変わったタイミングでお稽古をしたときに『お、すごいな』と思いましたね。ちゃんとホンを読んで準備をして稽古に来てくれたことがすごく嬉しかったです。それが逆に僕にとってもいいプレッシャーになりました」。

また、升のもとにも橋本からメールが届いたそうで、「稽古中もそうだったけれど、僕らふたりだけではなく、はっしーも来てくれているな、と」と升が言うと、後ろを振り返る戸塚。視線はふたりの後ろにある小道具の人形に目が向けられていた。それに気がつくと、升は「これ!?」と顔をほころばせ、戸塚も「誰よりも長く舞台に立っていることになりますね」と笑った。

息もびったり、打ち解けた様子が見られる升と戸塚だが、稽古場以外で親交を深める機会はなかなかなかったという。

「この作品はそんな余裕は微塵もないですね。行きたかったけどね」と升が言うと、戸塚も大きく頷く。

升はこの舞台の稽古に入るにあたり、酒をやめたという。「さすがに飲んでいたら無理だと思って。でもここから先、多少でも余裕ができたら行きたいですね」

そして、見どころを聴かれると、「本当にゲーム感覚で楽しんでいただけると思う」と戸塚。「アンドリューと僕との戦い。これにとにかく注目してほしいです」。

一方、升は「稽古しているときからそうだったんですけど、1幕と2幕では別の作品じゃない?っていうぐらい、全く違う世界観」だという。

「2幕分の大作を演じているというよりは、別の作品を2本立てでやっているような気持ちになる作品。もしかするとお客さんもその辺を感じてくださるかもしれません。親子ほど年が離れた男がふたりで常にバトルを繰り広げる。そのさまは客観的に見ると結構楽しいんじゃないかと思います」