参加者男性に“選ばれたい” バチェロレッテの苦渋の決断とは? 『バチェロレッテ・ジャパン』S3・最終話

AI要約

シーズン3の恋愛リアリティ番組『バチェロレッテ・ジャパン』の最終話では、バチェロレッテ・武井亜樹さんの決断が視聴者を驚かせた。最後の一人に選ばれた男性とは破局し、武井さんの旅は意義深いものとなった。

武井さんと男性参加者たちの間にはコミュニケーション不足があり、武井さんの本音や期待がうまく伝わらなかった。特に、最終的に選ばれた男性とのすれ違いが明らかになった。

バチェロレッテ・ジャパンは、ありのままの自分を受け入れられることの大切さを教えてくれた。リアリティ番組の中で、本物の恋愛や人間関係の難しさを実感させる内容となっている。

参加者男性に“選ばれたい” バチェロレッテの苦渋の決断とは? 『バチェロレッテ・ジャパン』S3・最終話

 2024年6月27日からPrime Videoで配信スタートした大人気恋愛リアリティ番組『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン3。7月11日に最終話となるエピソード8と、男性参加者とバチェロレッテによるスタジオトーク「アフターファイナルローズ」が配信された。最後の一人に選んだ男性と帰国したバチェロレッテ・武井亜樹さんが出した結論に、スタジオはとまどいを隠せなかったのだった。

 私たちはいち視聴者として、この旅にどんな意義を見い出せばいいのだろうか。最終話からスタジオトークのハイライトを振り返りながら、バチェロレッテ・ジャパンという恋愛リアリティショーについても再考していく。

・告白するより前に振られて……可能性を失ってから気付いた気持ち

 エピソード8、つまり最終話に残ったのは、内科医・坂口隆志さんと物理化学者・櫛田創さんの2人だ。経営者・北森聖士さんの辞退によって残されたとも言える2人だが、バチェロレッテの家族と対面し、最後のデートを経て運命のローズが手渡されることになる。

 前回から「最後の一人となっても、すぐに恋人にはなれない」と話していた櫛田さんは、かなり自分の気持ちに正直な人柄に見える。家族訪問の際は、武井さんが櫛田さんを紹介する形で話が進み、家族との関係性について触れる中で、武井さんの母が涙を見せた。その様子を「悪い涙ではない」と語った櫛田さんは、感情的に置き去りになってしまった部分があったのかもしれない。

 しかし、武井さんの母から投げられた「素直すぎる武井さんの弱点」に関しては、自身の言葉で武井さんの良さを語り返し、武井さん自身も、その姿を嬉しそうに見守った。その後のうどんデートでも、互いに等身大な姿をさらけ出しており、武井さんも櫛田さんとの最後の時間を楽しんでいるように見えた。

 しかし、ここでSNSでも物議を醸したとある失言が出る。櫛田さんが武井さんを「食べ物で例えるなら、おはぎ」と評したのだ。家族訪問の際には理路整然と語ってくれていたのに、この「おはぎ発言」に関しては、うまく理由を語ることもできず、武井さんに不審感を与えてしまう。

 こんな失態があったにも関わらず、デートを経て武井さんは「彼と帰りたいと思っていたことに気づいた」と、心の声を語った。旅の思い出を振り返りながら再度「好きになれていない」という告白をされたばかりだというのに、決定打を食らってはじめて、武井さんは彼への恋心に気づいてしまう。

 こんな展開はバチェロレッテ史上、はじめてのことだ。ローズを渡す相手を選べるという意味で、番組の構成上選ぶ側の立場に立っているはずの武井さんだが、いつの間にか参加者男性に「選ばれたい」と願う構図になっていた。

 たとえば、櫛田さんと同じく武井さんへの愛がまだないことを話したインフルエンサー・加藤友弥さんは、エピソード2の時点で落とされている。しかし、他のメンバーと比べて明確な愛を語りきれていなかった櫛田さんはここまで残った。その時点で、武井さん自身も私たちも気がつくべきだったのだ……櫛田さんに恋をしていることを。

 常に自身に正直に振る舞ってきたように見える武井さんは、目に見える色仕掛けや恋愛テクニックを使わず、櫛田さんとも内面的に向き合ってきた。恋愛的なアプローチがあれば、2人の関係性や櫛田さんの気持ちに変化はあったのだろうか。悲しいかな、この時点で櫛田さんの結論は告げられてしまっていたため、後は武井さんが「それでも好きな人にローズを渡すのか」に注目が集まった。

・言語化能力高めのヒロイン、分かったつもりになってしまった男性参加者たち

 武井さんの櫛田さんへの気持ちははっきりとしていることが分かったが、坂口さんに対しての気持ちは視聴者サイドからだと見えづらかった。家族訪問では武井さんの人間性を深堀りするような質問も投げかけ、櫛田さん以上の好感を与えているようにも見えた。坂口さんと武井さんの母のやり取りは、きっと武井さん自身にとっても坂口さんへの好感度を上げるものとなっただろう。

 そう考えると、シーズン全体を通して「男性参加者から武井さんへの問いかけ」が少なかったように感じる。武井さんの好きな男性像、理想の恋愛像……インタビューでは非常に分かりやすく言語化してくれていたので、私たちは武井さんの人間像について理解できているが、男性たちにとってはどうだっただろう。

 武井さん自身は探究心が強く、デート中に男性たちの価値観を掘り下げるシーンも多かったが、男性たちが武井さんに質問を投げかける様子は、あまり見受けられなかった。武井さん自身が素直で感受性豊かなので「見れば分かる」と思ってしまった男性も多かったかもしれない。

 しかし、私たちは知っている。武井さんに実は乙女な側面があること、男性からアプローチされたいと願っていたことを。しかし、その価値観が男性たちの口によって引き出されることはなく、結果的にすれ違いを生んでしまったシーンもたくさんあったように思う。梅谷さんの時も、北森さんの時もそうだ。

 そして例のごとく、坂口さんとも最後のデートですれ違いかけてしまうのだ。エピソード7での坂口さんの告白は、その意図を汲みかねる内容だった。自身の過去の愚行を語り「聖人君子ではない」と話した坂口さんだが、武井さんにはただただ不安を与えるだけの結果となってしまい、視聴者視点では自分から墓穴を堀りに行ったようにしか見えなかったのだ。

 しかし武井さんは意外にも、その不安を坂口さんにぶつけなかった。エピソード7では坂口さんを肯定していたため、このタイミングで話をぶり返されるのは、坂口さんにとっても心外だったかもしれない。武井さんに「なぜ不安を持ってしまったのか」と問うことはせず、話が飛躍していると責める態度を取ってしまった。

 ただ、坂口さん自身もきっと、ストレートな物言いの武井さんが心に不安を抱えているとは気が付かなかったのだろう。今回のバチェロレッテでは、そういった「男女のすれ違い」が如実に現れていたように思う。相手に気持ちや想いを確認する大切さを、再考せざるを得なかった。

・武井亜樹氏が作り上げた「ありのままの自分でいい」恋愛リアリティ

 そして、ファイナルローズを受け取ったのは坂口さんだった。武井さんが最後のデートを経て、櫛田さん、坂口さんと心から通じ合うことができたのかは分からない。それでも彼女は震える声で「坂口隆志さん」と名前を呼び、己の素直な恋心をしまい込んだ。そしてスタジオトーク「アフターファイナルローズ」では、そんな武井さんからとある告白がされた。帰国後、坂口さんとはすでに破局したという報告だ。

 経緯こそ分からないとはいえ、彼女は最後に「バチェロレッテである」ことを全うしようとしていた。スタジオトークを待たずに坂口さんと別れてしまうことで、他の参加者の旅の意義が失われるかもしれないこと、視聴者の期待を裏切ってしまうかもしれないことを謝罪した。だが彼女の顔を見れば、苦渋の決断だったことは、一目瞭然だ。

 ここでは、なぜ武井さんが運命の相手を見つけることができなかったのかについては言及しない。ただ、武井さんが旅に本気で向き合っていたことは、シーズン3を見届けた視聴者にも伝わっているのではないだろうか。

 武井さんは最後まで自分を偽らず、いい部分も悪い部分も、ありのままの姿で旅に臨んでいたように思う。それが恋愛においてどう作用するかは置いておいて、バチェロレッテという人の注目を浴びる旅に参加しながら、自身をさらけ出せた武井さんは強い女性であることは、間違いない。取り繕うことが、普通なのだ。

 しかし、本質的な恋愛・婚活においては、自身をよく見せることにどんな意味があるだろうか。化けの川はいつか剥がれる、だからこそ、ありのままの自分を受け入れてくれる人に出会えたなら、貴重なことだ。

 今回は男性参加者に関しても、ありのままに挑戦できた人が多かったように感じる。スタジオトークで坂口さんは「かけがえのない同志に出会えた」と話していたが、まさに自分らしく旅に参加し、弱点も見せてきた坂口さんだからこそ、最高の仲間に出会えたのだろう。自分の気持ちを貫き通した櫛田さんにとっても、同じく。

 非日常な旅のなかで、リアルすぎる人間関係の難しさを垣間見ることができたのは、きっと武井さんの人柄があってこそだ。これでこそ、バチェロレッテ・ジャパン。3人目のバチェロレッテを見届けて、ヒロインが変われば、婚活の雰囲気も見える側面も変わるということが分かった。恋愛リアリティの多様性を教えてくれた武井亜樹さんと男性参加者全員に、感謝したい。