「業界が求める完璧な“配信男”なんです」…夏ドラマで『旧ジャニタレが大量抜擢』の特殊事情

AI要約

夏ドラマが続々とスタートし、旧ジャニーズ所属タレントの出演が目立つ。

旧事務所から決別したことでタレントの起用が増え、視聴者やスポンサーも受け入れが良くなっている。

配信事業の重要性が高まり、旧ジャニタレのSNS影響力や再生回数男の要素が注目されている。

「業界が求める完璧な“配信男”なんです」…夏ドラマで『旧ジャニタレが大量抜擢』の特殊事情

7月に入り、続々と夏ドラマがスタートしている。

脚本家・宮藤官九郎(53)が女優の小池栄子(43)と初タッグを組む『新宿野戦病院』(フジテレビ)や、『半沢直樹シリーズ』『VIVANT』(ともにTBS系)の脚本を務めた八津弘幸氏(52)が手がける『GO HOME~警視庁身元不明人相談室』(日本テレビ系)など今季も注目作が目白押しだ。

しかし、それらにも負けず劣らず目を引くのが、旧ジャニーズ(現STARTO ENTERTAINMENT)のタレントたちが出演するドラマの多さである。

フジテレビは看板枠・月9の『海のはじまり』で『Snow Man』の目黒蓮(27)を主演に抜擢。さらに『Hey! Say! JUMP』の山田涼介(31)を金曜9時放送の『ビリオン×スクール』の主演に、『Snow Man』の向井康二(30)を月曜10時の『マウンテンドクター』に起用している。

TBSでは、『嵐』の櫻井翔(42)が『笑うマトリョーシカ』に出演。さらに火曜ドラマ枠では『西園寺さんは家事をしない』にて『SixTONES』の松村北斗(29)がレギュラー出演を果たしている。

テレビ朝日は『Snow Man』の渡辺翔太(31)を『青島くんはいじわる』の主演に起用。テレビ東京は、中島健人(30)が『しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~』で、主演を担当する。

これらに脇役まで含めるとなれば、かなりの数の旧ジャニタレが夏ドラマに出演することになる。いっときはほとんど姿を消した旧ジャニタレの起用が、急速に高まっている背景には何があるのか。その内情を、キー局関係者が語る。

「昨年、旧ジャニーズ事務所の性加害問題が騒がれていた頃は、所属タレントをドラマにキャスティングすると、視聴者からのクレームが入ることが当たり前でした。厳しい態度を見せるスポンサーもあり、民放各局は一時的に起用を控えていました。

しかし、4月からSTARTO社が本格始動したことで、正式に旧事務所から決別したことになり、スポンサーも態度を軟化させるようになった。また局側としても、STARTO社が本格始動したタイミングで恩を売っておけば、ドラマ以外のバラエティ番組や歌番組へのキャスティングも安易になりますから、そういう意図もあると思いますよ」

テレビの「視聴者離れ」が叫ばれて久しい。さらにコロナ禍以降、制作費の削減で各局とも厳しい台所事情を抱えている。そんな中で、活路を見出そうとしているものの一つに配信事業がある。その理由を、キー局編成担当が語る。

「’15年に無料配信動画サービス『TVer』を民放5局の共同で開始させて以降、その再生数は爆発的に伸びています。概算になりますが、各局の『TVer』の配信収入は年間50億~60億円ほどといわれています。まだまだ放送収入には及びませんが、配信収入は毎年2倍近い伸び率を記録しており、ここ5~8年ほどで逆転する可能性もあるといわれている。今、テレビ業界がもっとも期待を寄せるコンテンツです。

旧ジャニタレは、配信事業のコア層である10代~30代の“スマホ世代”と親和性が高い。彼らのSNSも影響力絶大で、配信を狙ったキャスティングには必要不可欠な存在となっているのです」

実際に、社会現象になるほどのヒット作も出ている。フジテレビが’22年10月期に制作した目黒蓮主演ドラマ『silent』は、平均世帯視聴率こそ7.6%だったが、配信では1話あたり平均500万回も再生され、民放歴代最高記録を叩き出した。これを受けて、「国民的大ヒット」と謳う報道も多く、典型的な成功例と言えるだろう。

「今期の目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』も、初回放送の平均世帯視聴率は8%台と微妙な発進でしたが、『TVer』では、第1話の見逃し配信の再生回数が460万回を超えています。第1話だけで見ると『silent』を超える結果となりました。目黒だけでなく、山田涼介も配信に強いと業界での評価が高いですし、今期の夏ドラマでは『TVer』のランキング上位を、旧ジャニタレが独占するなんて可能性も十分ありますね。

かつては“視聴率男”なんて言葉がありましたが、今、テレビマンが求めるのは配信の“再生回数男”です。だからこそ、実力派俳優でも大御所でもなく、配信で跳ねる旧ジャニタレを多用する流れができると思います」(前出・キー局編成担当)

今後も、その勢いが衰えることはなさそうだ。