都知事選での「大河休止問題」でNHKは「なぜサブチャンネル使わない?」 理由を識者に聞いた

AI要約

ネット上で大河ドラマファンが悲鳴を上げた7月7日の夜、東京都知事選挙の開票速報により「光る君へ」の放送が休止され、不満の声が相次いだ。

視聴者の中にはサブチャンネルの活用を提案する声もあったが、エキスパートは一般視聴者がサブチャンネルについて理解しているとは限らないと指摘している。

NHKの放送休止は一般視聴者の混乱や視聴体験の悪化を避けるために正当化されるものであるとの見方がある。

都知事選での「大河休止問題」でNHKは「なぜサブチャンネル使わない?」 理由を識者に聞いた

 7月7日の夜、ネット上には大河ドラマファンの悲鳴がこだましていた。東京都知事選挙の開票速報により、「光る君へ」(NHK総合など)の放送が休止されたからだ。

 X(旧ツイッター)を見てみると、《都知事選は東京都民以外には何も出来ること無いのに、どうして全国放送の大河ドラマ、光る君へを放送延期にするんだよ》といった、東京都だけの事情によって全国放送の大河ドラマが押しのけられることへの不満が続々。併せて、《こんな時にこそのサブチャンネルがあるのに何故…》といった、NHKはせっかくのサブチャンネルを活用していないという声が上がった。

 地上波デジタルテレビ放送は、同一のチャンネルにおいてメインチャンネルとサブチャンネルの同時放送が可能。これらの声の主は、両チャンネルを活用すれば「光る君へ」が通常通り放送できたではとの思いをXにぶちまけているわけだ。

 このした意見に対し、同志社女子大学でメディアエンターテインメントを研究する影山貴彦教授は、「光る君へ」の放送については都知事選についての報道を優先させつつ、「BSでは通常通り放送して良かったのではないか。また、地上波では21時からの放送で良かったかもしれない」と指摘するが、「放送休止は決して間違いではない」とも語る。

■「サブチャンネルの存在自体、一般視聴者に広く意識されているとは言い難い」

 大河と開票速報のどちらをサブチャンネルにするかという議論は残るものの、妙案に思えるサブチャンネルの活用。だが影山氏は、「サブチャンネルの存在自体、一般視聴者に広く意識されているとは言いがたく、いざやってみた場合、混乱する視聴者が続出する可能性がある」と指摘する。

「『サブチャンネルでやれば良い』という声を上げている方は、視聴者の中でもそれなりに『テレビ通』なのではないでしょうか。そのように通な方がいる一方で、一般視聴者の中には『サブチャンネルへの切り替え方法』を瞬時には分からない方、それどころか、『サブチャンネルの存在』自体、ご存じない方も相当数いらっしゃるように思います。このような状況下で通常通り大河ドラマを放送するよりは、1週休むという方が妥当であるとのNHKとしての判断だったのではないでしょうか」

■番組の頭からサブチャンネルでは切り替えが難しい

 なお、NHKでは2022年の冬季五輪・北京オリンピックの「スノーボード男子ハーフパイプ・決勝」の放送においてサブチャンネルが活用された例があるが、影山氏はこれについても、今回の「光る君へ」とは事情が異なり、やはり、「放送休止でも問題ない」との考えを述べる。

「北京オリンピックの場合は確かに放送中にサブチャンネルへの切り替えが行われ、通常番組とオリンピックの同時放送が行われましたが、『競技が放送中だった』ため、切り替えに成功した視聴者が多かったのでは」

 確かに、今回の例では、通常、『光る君へ』が始まる20時ちょうどでサブチャンネルの放送が始まることになる。そんな状況で「大河ドラマが今週は休止」という事実を知らずに20時ちょうどにテレビの電源を入れたり、チャンネルをNHK総合に合わせた視聴者ともなれば、状況が飲み込めずにフリーズしてもおかしくない。

「このような状況下に置かれた視聴者は、それこそ、しばらくの間は状況が分からずに開票速報を呆然と眺めるといった行動をとってしまう可能性があります。そのような視聴者が多発してまで両チャンネルでの放送を行うよりは、ドラマよりも報道を優先させて1週休む方が妥当と判断したNHKは、やはり、正しいと思います」

 ちなみに上述の北京オリンピックの「スノーボード男子ハーフパイプ・決勝」の放送において、日本代表の平野歩夢選手が金メダルがかかった状態で滑り出した瞬間にテレビの画面が「サブチャンネル切り替え方法のご案内」に変わったため、決定的瞬間を見逃したとする声が視聴者から噴出した。サブチャンネルを使ったら使ったで別の問題が発生しかねない状況がある以上、放送休止はやはり合理的なのだろう。

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 本来なら東京都だけのイベントである都知事選の巻き添えを食らった形の「光る君へ」。放送休止に対してはたくさんの不満の声が上がった。

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