ラジカセ1台で一緒にレコード店回り 最高傑作だった「ノラ」 門倉有希さん死去 

AI要約

美空ひばりさんの最後のプロデューサーである門倉さんが、CDバブル期に声と歌だけで勝負し、独特のハスキーボイスで成功を収めたエピソードを紹介。

門倉さんはなまりを持ちながらも歌声に迫力があり、ドライさと熱い思いを持つ人物であった。彼女のデビュー曲「鴎…カモメ」と木下結子のカバー曲「ノラ」が特に注目された。

地元での凱旋公演には、彼女の魅力と祖父が持ってきた手打ちそばの味が印象的であり、門倉さんの個性がよく表れている。

ラジカセ1台で一緒にレコード店回り 最高傑作だった「ノラ」 門倉有希さん死去 

 【悼む】美空ひばりさんの最後のプロデューサーがレコード会社を退社して次の人生を懸けるとして発掘、世に出したのが門倉さんだった。当時音楽業界はCDバブル期。テレビドラマやCMとタイアップした曲がミリオンセラーやダブルミリオンを当たり前のように記録していた。

 そんな時世に背を向けて「あえて声と歌だけで勝負したい」と、ラジオカセット1台を持ってレコード店回りをして売り出した。その思いに感銘して何度か一緒にレコード店回りに同行した。

 福島なまりが残る門倉さんはなまりを恥ずかしがってか言葉少ない人だった。だがその歌声は独特のハスキーボイスに、まだハタチぐらいだったにもかかわらず、ドキッとする色気と迫力があった。一方で、そんなスタッフの熱い思いをよそに好きな男性と夜逃げして一時失踪してしまうなど、現代っ子のドライさと思い込みの激しさが同居する人だった。

 デビュー曲「鴎…カモメ」も彼女の魅力満載の作品だったが、木下結子のカバー曲「ノラ」が彼女の最高傑作だった。これほどすさまじいドラマが歌えるのかと心底驚いた。デビュー直後、地元での凱旋公演に、可愛い孫娘のために彼女の祖父が打って持ってきた手打ちそばの味と、いつも出会うたびに浮かべる照れたようなはにかんだ笑顔が忘れられない。(編集主幹・元尾 哲也)