【悼む】「鴎…カモメ」「どん底」「ノラ」…初期の歌に門倉有希さんの生きざま凝縮

AI要約

門倉有希さんが乳がんのために亡くなったことが明らかになりました。彼女は独特のハスキーボイスと歌唱スタイルで知られ、数々のヒット曲を生み出しました。

門倉有希さんはデビュー曲「鴎…カモメ」で20歳の若さで注目を集め、その後も様々な困難を乗り越えながら歌い続けました。

彼女の人生や歌唱からは、強い意志と愛情が感じられ、彼女の歌声は多くの人々の心に永久に残るでしょう。

 「ノラ」などの楽曲で知られる歌手の門倉有希(かどくら・ゆき)さんが6日に乳がんのために亡くなっていたことが7日、分かった。50歳だった。所属事務所が発表した。19年9月に、自身のブログで乳がんに罹患(りかん)していることを公表。今年2月初旬に緊急入院していた。

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 独特のハスキーボイスとうなり節が印象的だった。いまから思えばだが、初期の歌に門倉有希さんの生きざまが凝縮されていた。

 94年に「鴎…カモメ」でデビューした。20歳だった。港を舞台に、「自分がカモメなら恋などしない」と揺れる女心を迫力満点に歌った。当時、同じレコード会社だった都はるみ2世と言われた。

 ところが数々の新人賞候補になりながら、同年秋に失踪騒動を起こした。当時、事務所は「過労」と説明したが、男性との問題だった。男は束縛を強め、命の危機を感じたこともあったという。カモメにはなれなかった。「私って、相手の言うことに左右されやすいんです。まるで『恋の奴隷』っていう歌そのまま」と、インタビューに答えた。

 ふるさと福島で謹慎後の復帰作は「どうせ東京の片隅に」。東京には夢がない、ふるさとには何もない…と、歌った。失踪事件を起こしたが、大都会で歌い続ける心情が、ひしひしと伝わった。

 続く新曲は「どん底」。何度もだまされたが、ぐずな私と同じあんたは違う、と歌った。それでも愛を信じた。

 そして代表曲「ノラ」。失踪事件で拒食症になるなど、苦しい日々は続いた。心の支えとなったのが、かつて野良猫だった愛猫のリボンだった。「歌いたい」と思った。自分の過去を重ねた。今もカラオケで歌われる名曲となった。

 大好きな矢沢永吉の歌を聴いて「パワーをもらいたい」と話していた。長い闘病の末、力尽きたが、独特の歌声は人々の心に刻まれている。【笹森文彦】