首相続投・交代希望の理由と自民支持層の「本音」 世論調査から

AI要約

厳しい政権運営を迫られている岸田文雄首相。岸田氏が首相を続けるためには9月の党総裁選で再選される必要がある。毎日新聞が行った調査では、岸田氏の再選を望む声は少数であり、裏金問題や政策不満などが指摘されている。自民支持層でも賛否両論があり、裏金事件への対応が焦点となっている。

外交手腕を高く評価される岸田首相には支持の声もあり、裏金問題への不信感や国内政策への不満が続投を望む声に影響している。自民支持層の中でも意見が割れ、岸田首相の続投に対する不安がある。

裏金事件への対応や政策不満が岸田政権の支持率低迷につながっている。岸田首相がリーダーシップを発揮して信頼回復を図らなければ、続投が難しいかもしれない。

首相続投・交代希望の理由と自民支持層の「本音」 世論調査から

 厳しい政権運営を迫られている岸田文雄首相(自民党総裁)。岸田氏が首相を続けるためには9月の党総裁選で再選される必要がある。毎日新聞が5月18、19日に実施した全国世論調査では、岸田氏が再選され、首相を続けた方がいいか尋ねたところ、「続けた方がいい」は12%にとどまり、「交代した方がいい」が72%と多数を占めた。国民は何を評価し、何を評価していないのか。そして自民支持層の「本音」は。調査の自由記述の回答から見えてきたことを報告する。

 調査は固定電話と携帯電話のショートメッセージサービスを組み合わせて実施した。携帯電話で回答した543人を対象に上記の質問の回答理由を自由に書いてもらうと、423人が意見を記入した。

 ◇続投派「代わる人材がいない」

 まず「続けた方がいい」と回答した人の理由で目立ったのが「他にいない」という回答だ。50代男性は「岸田首相に代わる人材がいない。政権を担える野党は存在しない」とし、60代女性は「他に支持する人がいない」と書き込んだ。積極的な評価としては「外交手腕は高い評価を受けている」(20代女性)、「外交のうまい岸田さんに続けてほしい」(40代男性)など外交面に集中しており、岸田内閣の外交への期待は大きいようだ。ただ、国内政策に言及する書き込みは少なかった。

 ◇交代派「国民の信用失った」

 半面、「交代した方がいい」では、「裏金問題の実態解明が不十分、その他の問題についても全て本気に思えない」(60代男性)や「少子化対策が期待外れだった。人口が減り続けていく未来しか見えない」(30代女性)など、自民党派閥の裏金事件への対応や国内政策への不満が相次いだ。岸田内閣の支持率は今回調査で20%と11カ月連続で30%を下回っている。このためか、「国民の信用を失った総理は退陣すべきだ」(40代男性)、「岸田さんは一生懸命やっているが、国民の信頼が薄くなっているから交代の時期ではないか」(70代女性)といった指摘もあった。

 複雑なのは自民支持層だろう。総裁選は自民党議員や党員による選挙だ。自民支持者に限ると、「続けた方がいい」の回答は40%で「交代した方がいい」(38%)と拮抗(きっこう)。「どちらとも言えない」も21%あった。4月の調査では、次の衆院選で政権交代してほしいか尋ねる質問で自民支持層の77%が「政権交代してほしくない」と回答しており、自公政権の継続を望む声が多数を占めていた。自民支持層の中で、岸田首相のもとで衆院選が行われた場合への不安が見え隠れする。

 自民支持層で「交代した方がいい」と回答した人の理由を見ると、「裏金問題で派閥の長だった岸田首相が、自分だけ責任を取らずに他の人を処罰できるのか」(60代男性)、「裏金問題の対応が極めて不十分」(70代男性)など裏金事件への対応を問題視する声が目立ち、事件の影響の大きさがうかがえた。その一方で「岸田首相は交代した方がいいと思うが、誰が適任かわからない」(50代男性)という「悩み」も寄せられた。

 裏金問題が直撃し、支持率が低迷する岸田政権。岸田首相が続投を果たすには、リーダーシップを発揮して裏金問題の不信感を払拭(ふっしょく)することが近道となるのではないか。【野原大輔、大隈慎吾】