これをやって切れる人間関係なら捨てていい…和田秀樹「本当に必要な人間関係を見極めるリトマス試験紙」

AI要約

和田秀樹さんは、「ラクであること」が歳を重ねてからの人間関係において重要であると述べている。

人間関係で大事なのは、他人の心はわからないという原則を理解すること。自分の弱いところをさらけ出し、相手がどれだけ考えてくれるかを見極めることが重要だ。

遠慮せずに頼ることは、人間関係のリトマス試験紙となり、本当に大事な相手を見極める手助けとなる。

人間関係を整理するには何をすればいいか。精神科医の和田秀樹さんは「歳を重ねてからの人づき合いのポイントは、『ラクであること』が重要だ。いま、まわりにいる人のかなりの割合を占めるのは『好きでも嫌いでもない人』であるだろう。それは相手に対して、心理的に『いい加減』な距離が保たれていて、ウェットな関係のようにストレスが溜まることがないからだ。少しドライなくらいの関係が、結局はベストバランスである」という――。

 ※本稿は、和田秀樹『65歳からのひとりを楽しむ「いい加減」おつき合い』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■人間関係で重要な原則「他人の心はわからない」

 たとえば、あなたがお金に困る事態になったとして、まわりの人に「お金を貸してほしい」と頼むのは、かなり抵抗があると思います。

 自分の恥をさらすことになるばかりでなく、相手に迷惑がられて気まずくなる可能性も高く、絶縁される覚悟さえ必要になるでしょう。

 それでも頼むしかないというとき、思い切って相談した友人が手を差し伸べてくれたとしたら、その人こそ本当の親友だと実感するのではないでしょうか。本当に困っているとき、遠慮せず人に頼ってみると、自分にとって大事な関係が浮き彫りになります。

 人間関係で重要な原則のひとつは、「他人の心はわからない」ということです。

 親子や夫婦であっても、相手がどう思っているか、本当のところはわかりません。それをわかった気になるほうが、よほど危ういと思います。

 相手の心はわからない。でも、自分が何らかのアクションを起こせば、それに対する相手の反応は確実にわかります。

 お金を貸してほしいと頼めば、相手から何かしらの反応が返ってきます。率直に「自分もお金がないから貸せない」と言う人もいれば、明らかにお金をたくさん持っているのに、にべもなく断る人もいるでしょう。

■頼ってみることが人間関係のリトマス試験紙

 一方で、お金がないなりに、可能な限りの金額を貸してくれる人もいます。中には、よそから借りてまで用立ててくれる人もいるかもしれません。

 自分の弱いところをさらけ出し、相手にとっては負担になるかもしれない相談をしたとき、親身になってくれるかどうかで、相手が本当に自分のことを考えてくれている人なのかがわかります。

 もちろん、相手に頼った結果、拒絶され、関係を切られることもあると思います。そうなったとすれば、もともとその程度の関係だったということです。

 多少、人間関係が減るリスクがあるとしても、それを怖れずに、素直に人に頼っていいと思います。それで相手が思ったほどこちらのことを考えていないとか、損得勘定だけでつき合っていたのだとわかれば、こちらから関係を見直せばいいことです。

 むしろ、頼ってみたときに「やっぱりこの人はいい人だった」と、あらためて思えるような人でなければ、わざわざつき合う意味があるのか疑問です。

 遠慮せずに頼ることは、自分にとって大事な関係を見極めるための、重要なリトマス試験紙になります。

 それによって、本当に大事にしたい相手がわかると同時に、切れていい関係は切れます。結果的に、人間関係が自分にとって「ちょうどいい加減」に整うのです。

■切れてもいい人間関係は切っていい

 人間関係というものを、重くとらえすぎない。とくに歳を重ねてからは、それが基本です。

 話していて気疲れする相手、自分が合わせなければいけない相手、言いたいことが言えない相手とつき合う必要はありません。それは歳を重ねたからこその特権です。

 一方で、遠慮せずに話しかけたり、頼ったりしてみると、好ましい反応を返してくれる人もいます。そういう人とだけつき合えばいいのです。

 それこそお金の相談をしたり、悩みごとを打ち明けたりしたとき、相手にすごく冷たい反応をされたら、「こんなに冷たくされるなんて」「あの人を信用して損をした」などと、嘆いたり憤慨したりするのではなく、「あの人がどういう人かわかってよかった」と思うようにしたほうがいいでしょう。

 「こんなことを言ったら嫌われる」と遠慮する必要はありません。言ってみて嫌われたら、その人とはつき合わなければいいだけの話です。言ってみても嫌われず、相手とわかり合うことができたら、関係がよりよいものになります。

 相手から会いたいと誘われたとき、あまり気が乗らないのであれば、断っていいと思います。

 私もここ最近は仕事が忙しくなったこともあり、人からの誘いを断らざるを得ないことが多くなりました。それで切れてしまう関係もあり、結果として人間関係がかなり整理されました。

 切れてもいい人間関係は切っていい。一方で、この人には先約を断ってでも会おうと思う相手もいます。その優先順位は、相手の社会的地位などではなく、会っていて自分が本当に心地いいかどうかで決まります。

 歳を重ねてからの人づき合いのポイントは、「ラクであること」。

 この人と話しているとラク、一緒にいてラク、互いに遠慮しなくていい。それが望ましい関係です。