盛岡市新庁舎、内丸エリアに にぎわい創出へ、2039年度使用開始

AI要約

盛岡市新市庁舎整備審議会は、新庁舎を内丸エリアに整備する方向で合意した。

内丸エリアの特にまちづくりの観点で高く評価され、今後の基本構想策定を目指す。

新庁舎は2039年度を想定して使用開始される予定で、内丸エリアでの整備が進むことに安堵の声が上がっている。

盛岡市新庁舎、内丸エリアに にぎわい創出へ、2039年度使用開始

 盛岡市新市庁舎整備審議会(会長・倉原宗孝岩手県立大教授)は22日、盛岡市の新たな庁舎を現在の本庁舎がある内丸エリアに整備する方向で合意した。同時に検討した他の2エリアよりも、特にまちづくりの観点で高く評価した。市は審議会からの答申を受け、年内の基本構想策定を目指す。【釣田祐喜】

 盛岡市の現本庁舎は1962年に完成した。分庁舎も含め、建物や設備の老朽化が進んでいるほか、来庁者駐車場の不足やユニバーサルデザインへの対応なども求められている。人口減少への対応、デジタル化の進展による窓口業務のあり方などについても検討する必要がある。

 審議会は、都市計画の専門家や商工関係者、公募委員ら13人で構成する。市から23年4月に諮問を受け、将来の市庁舎のあり方などとともに整備する場所についても議論してきた。

 審議会には当初、市民からの提案を踏まえ、盛岡城跡公園や市営野球場なども案として上がっていた。しかし、関係法令の規則や周辺環境の面などから整備に適しないと判断。審議会に先立つ有識者懇話会で検討された内丸エリア▽盛岡駅西エリア▽盛南エリア――の3候補に絞って評価することとした。

 審議会では、市民にとっての利便性や防災、事業費などの15の項目を設定。委員が点数をつけてそれぞれを評価し、その結果をとりまとめた。

 内丸エリアは、まちづくりの面で特に評価が高かった。官公庁が集中し、コンパクトなまちづくりを目指す既存計画と合致。盛岡城跡公園と近く、さんさ踊りも開かれるなど、歴史や文化を育んできた経緯も考慮された。

 22日夜の審議会では、これまでの委員による評価の集計結果などを踏まえてエリアを選定。今後、内丸エリアでの整備が想定通りに進まない場合などに備え、残るエリアで検討する選択肢も残しておくべきだという意見も示された。倉原会長は「全体として議論してご確認いただいた」と述べた。

 審議会は、検討結果をまとめて今年8月ごろに市に答申する方針。市は、答申を踏まえ基本構想を策定する。

 用地選定や交渉を経て設計、建築工事に進み、使用開始は2039年度を想定している。

 審議会の検討結果に安堵する声も上がった。内丸エリアかいわいの飲食店など約90店舗で構成する東大通商業振興会の颯田(さつた)淳会長は取材に「ほっとした」と胸をなでおろした。

 颯田会長の記憶に新しいのは、市役所近くにあった岩手医大が盛岡市外に移転したことだ。2000年代から段階的に矢巾町の新キャンパスに移転。2019年には自衛隊や県警も出動し100人超の入院患者を搬送する付属病院の「大移動」もあった。

 残された内丸エリア。「人の流れが変わった。商店街への打撃は大きかった」(颯田会長)とし、市役所の新庁舎については内丸エリアで整備するよう市に要望書を提出していた。

 全国各地の都市で発生しているような、伝統的な中心市街地から車で往来する郊外の大型ショッピングセンターなどに人が流れる現象も盛岡市で起きている。整備エリアの方針が固まった新庁舎は「にぎわいの創出」という使命も担うことになる。

 官公庁の中核を形成すると同時に、人が集まるようなまちの魅力を発信することができるか。そのための構想が今後問われることになる。

 ◇詳細な場所は2025年度から選定

 庁舎が整備される具体的な場所についてはどうか。現在の本庁舎と同じ場所に建て替えるならば、工事期間中の仮庁舎も必要となるなど、より高額な費用が見込まれるため、市は新たな場所への移転を前提としている。だが古くからの住宅や商店などが多い内丸エリアで広い敷地を確保するのは容易ではなさそうだ。

 ではどんな場所に決まる可能性があるだろうか。「(移転した)岩手医大の敷地に新市庁舎と、盛岡市の庁舎同様に老朽化が進む岩手県庁を一体的に整備してはどうか」(颯田会長)などとアイデアも既に上がっている。

 詳細な場所について「未定」としている市は、2025年度からの5年間を用地選定や地権者との交渉にあてたい考えだ。