袴田さんの姉・ひで子さん「巌を人間らしく過ごさせてください」、再審公判が結審

AI要約

1966年に静岡県で起きたみそ製造会社専務一家殺害事件の再審公判が行われた。死刑が確定した袴田巌被告の無罪を主張する弁護側と、検察側の対立が続いている。

袴田被告は無実を主張していたが、80年に最高裁で死刑判決が確定。しかし、2014年に再審開始が認められ48年ぶりに釈放された。再審では袴田被告の犯行着衣についた血痕の色が争点となっている。

検察側は再び死刑を求刑しており、衣類の血痕が袴田被告の犯行を示す証拠だと主張している。一方、弁護側は血痕の赤みが消える可能性や捏造の疑いを指摘し、無罪を主張している。

 1966年に静岡県でみそ製造会社専務宅が全焼し、一家4人が殺害された事件で、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌被告(88)の再審第15回公判が22日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。検察側は論告で袴田さんが犯人だとして、56年前の1審と同様に死刑を求刑。弁護側は最終弁論で「捜査機関が証拠を捏造(ねつぞう)した冤罪(えんざい)だ」と無罪を主張し、結審した。判決は9月26日。

 事件は66年6月30日未明に発生。同社従業員だった袴田さんが逮捕・起訴され、無罪を訴えたが、80年に最高裁で死刑判決が確定した。第2次再審請求審で静岡地裁が2014年に再審開始を認めて袴田さんは48年ぶりに釈放され、昨年3月の東京高裁決定で再審開始が決まった。

 高裁決定は事件の約1年2か月後に現場近くのみそタンクで見つかり、袴田さんの犯行着衣とされた「5点の衣類」に付いた血痕の色について「1年以上みそ漬けされた血痕の赤みは消える」と認定。赤みがあることを前提とした確定判決に疑義が生じたとし、捜査機関が証拠を捏造した可能性に言及した。

 昨年10月に始まった再審公判でも「5点の衣類」が最大の争点となった。検察側は論告で衣類は袴田さんの犯行着衣だと主張。他にも犯行を示す証拠が多数あると述べた。衣類の血痕については「赤みは残りうる」とし、「タンクに衣類を入れるなど、捜査機関が証拠を捏造することは非現実的で不可能だ」と強調した。

 弁護側は最終弁論で、長期間みそ漬けされた血痕の赤みが消えることは化学的にも明らかだと改めて主張。衣類は警察と検察が共謀して捏造した疑いがあり、「死刑求刑を撤回すべきだ」と述べた。

 袴田さんの姉・ひで子さん(91)は最終意見陳述で「余命幾ばくもない人生、巌を人間らしく過ごさせてください」と述べた。